薬剤性腸炎,偽膜性腸炎,出血性腸炎
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偽膜性腸炎(pseudomembranous enterocolitis)

▼偽膜性腸炎の概念

抗菌剤を長期間投与すると大腸粘膜に菌交代現象がおこり、 大腸にク口ストリジウム・ディフィシル(Clostridium diffcile)というグラム陽性の嫌気性桿菌 が異常増殖することがあります。
Clostridium diffcileは、毒素(エンテロトキシン)を産出して腸管粘膜を傷つけ偽膜を形成する 大腸炎を発症させ、下痢などを引き起こします。

偽膜性大腸炎を起こす可能性のある内服薬としては、ペニシリン系、セフェム系、サルファ剤などです。

したがって、抗生剤投与後に下痢がみられたら本疾患を疑う必要があります

▼偽膜性腸炎の症状

主症状は粘液・血液を伴う激症下痢です。腹痛を伴うことが多く、また、発熱も来たします

下痢や不感蒸泄が増えることで電解質異常や脱水を来たすと痙攣を伴ったり、場合によっては致死的なことも あります。

▼偽膜性腸炎の検査

便中のディフィシル菌毒素の検出や便の培養検査を行いますが、 Clostridium diffcileは常在菌のため、 毒素の検出や培養のみで偽膜性腸炎と診断することは不適切です。

S状結腸から直腸に好発するので、内視鏡検査を行います。
腸管に偽膜形成がみられたら確実です。

▼偽膜性腸炎の治療

治療としては原因薬剤の投与中止、輸液などで対応をしながら様子をみますが、 症状が重篤であればバンコマイシンを経口投与しClostridium diffcileをたたきます。

出血性腸炎

薬剤性腸炎のひとつで、抗生剤投与後に血性下痢をともなう場合、本症を疑います。
若年者に多く、合成ペニシリン、特にABPCの経口投与で発症することが多いです。
Klebsiella oxytocaの関与も示唆されていますが、発症機序は不明です。

大腸内視鏡で深部大腸に全周性の発赤、浮腫、びらんが認められ、 横行結腸など深部大腸がおかされやすい傾向があります。

ほとんどの例が抗生物質の中止と輸液などの対症療法で改善します。