腎臓の構造と機能
▼概要
腎臓の形はよくソラマメに例えられます。
腎臓は2つありますが、それぞれ左右の肋骨の下の背中側あります。
腎臓の役割は尿を作ることです。
尿を作る理由は、体内の恒常性を維持するためです。
体内の恒常性といってもピンと来ないかもしれませんが、たとえば、
浸透圧で考えてみます。
血液の浸透圧が高くなるような状況下では腎臓は濃い尿を作り、
逆に血液の浸透圧が下がるようであれば尿は薄い尿を作ります。
その結果、尿の浸透圧は50〜1200mOsm/lで変動しますが、
血液の浸透圧は285〜295mOsm/lと一定の値に維持されます。一定の状態で維持されることを
恒常性といいます。
同じように、血液中の電解質であるNa(ナトリウム)、K(カリウム)、P(リン)、Ca(カルシウム)の値もほぼ
一定の値となりますが、腎臓は重要な役割を果たしています。
▼濾過と再吸収
腎臓の機能で重要なのが、濾過と再吸収です。
腎臓のミクロな構造の基本単位をネフロンといいますが、ネフロンは、
濾過を行う腎小体(糸球体とボウマン(Bowman)嚢)と
再吸収を行う尿細管より構成されます。
腎小体(糸球体とボウマン(Bowman)嚢)は下図のようになっています。
血液が糸球体を流れていると、血漿の一部はボウマン嚢へと移動し尿細管へと送られます。
これを濾過といい、ボウマン嚢へと移動した血漿は原尿といいます。
模式的に書くと下図のようになります。
腎臓の機能を考える際には、腎血漿流量(RPF)と糸球体濾過量(GFR)
が重要です。
腎臓中を流れる血漿量がRPFで、実際に濾過されて原尿となった量がGFRです。
血液は血漿と血球に分かれますが、原則血球は濾過されないので(濾過されたら血尿となる)、
血液量よりも血漿量で考えるようです。
ちなみに、正常であれば、循環血液量は通常5L/分くらいで、その20%が腎血流量になるので腎血流量1L/分くらいです。
腎血漿流量はヘマトクリットを50%とすると500mL/分くらいになります。
その内の20%が濾過されるのでGFRは100mL/分くらいになります。
なお、RPFはPAHクリアランス、GFRはクレアチニンクリアランス(他にイヌリン、チオ硫酸ナトリウム)
より求めます。
▼再吸収
再吸収は、尿細管とそれと伴走する血管との間で行われます。
濾過の逆のような感じで、原尿中にある必要な成分(アミノ酸、ブドウ糖、電解質、蛋白など)を再び血液中に回収する
作業です。
下図は近位尿細管での再吸収の模式図です。
尿細管は、近位尿細管、Henleループ、遠位尿細管、集合管に分かれます。それぞれ再吸収を行う物質やメカニズムが
違うので、それぞれを理解する必要があります。
近位尿細管では、ブドウ糖やアミノ酸に加え、β2ミクログロブリンなどの小分子蛋白質も吸収されます。
電解質では、HCO3-、Naなどの再吸収を行っています。
アンモニアを分泌していることも重要です。
Henleループでは、ループ利尿薬の作用点であるNa-K-2Clポンプが重要です。またKを排出してCaやMgを
再吸収しています。
遠位尿細管は、サイアザイド系利尿薬の作用点であるNa-Cl共輸送体が重要です。
集合管ではアルドステロンが作用するNa-K-ATPaseと抗利尿ホルモンが作用する水チャネル(アクアポリン)が重要です。
腎臓の構造と機能で正しいのはどれか。2つ選べ。
a 糸球体は皮質と髄質とに分布している。
b 抗利尿ホルモンによって尿は濃縮される。
c エリスロポエチンは腎臓から分泌される。
d アルドステロンはカリウム再吸収を増加させる。
e 糸球体で濾過されたナトリウムの約10%が再吸収される。
下垂体後葉から分泌された抗利尿ホルモン(バソプレッシン)は、集合尿細管に作用して水を再吸収するために
尿は濃縮されます。
エリスロポエチンは腎臓から分泌され赤血球の産生を促すので、bとcが正解です。