急性肝炎
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急性肝炎

▼急性肝炎の概念

急性肝炎は、肝炎ウイルス、薬物、アルコールなどにより急性の肝機能障害を来たす疾患です。
急性肝炎といえば、肝炎ウイルスによる急性ウイルス肝炎を指すことが 多いです。
急性ウイルス肝炎は、原因となるウイルスの種類により、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、 その他のウイルス肝炎に分類されます。

一般的な症状としては、全身倦怠感、食欲不振、黄疸などです。
全身倦怠感や食欲不振はさまざまな疾患で見られる症状であり、 肝炎の特異的な症状ではありませんが、血液検査ではルーチンで肝機能障害を示唆するASTやALTを 調べるため、検査値の異常により肝炎を疑うことが可能です。
しかし、肝障害(AST、ALTの上昇)を呈する感染症は肝炎ウィルス以外にも多くあり(ウィルスではEBウィルスにサイトメガロウィルス、 細菌ではリケッチア感染症やライム病など)、鑑別が必要です。
多くの場合、感染ルートが手がかりになることが多いため、問診は重要です。


▼A型急性肝炎

<概念>
A型肝炎ウィルス(HAV)による経口感染症です。二枚貝などが感染源として 多いですが、特定できない場合もあります。
慢性化することはなく、劇症化することもまれで予後は良好ですが、急性腎不全、造血器障害(再生不良性貧血など)を 呈する例も報告されており、注意が必要です。
現在はHAVワクチンがあるので、 重症化傾向の高い高齢者や海外赴任者には接種が望まれます。

<症状>
臨床経過は、前駆期→黄疸期→回復期になります。
前駆期には、発熱、食欲不振、倦怠感などをみます。黄疸期には黄疸が出現しますが、 全身状態としては軽快してきます。
回復期で症状は消失します。
発症初期に2、3日続く38℃以上の発熱をみることが特徴です。
関節痛などの全身症状もみられることが多いです。

<血液検査>
トランスアミナーゼ(AST、ALT)の上昇、胆道系酵素(ALP、γ-GTPなど)の軽度上昇がみられます。
TTTの上昇はA型肝炎の特徴です。
HA抗体、HA抗原の検出も診断に有用です。

<治療>
特異的なものはなく、急性期は安静臥床、対症療法となります。

▼B型急性肝炎

B型肝炎ウィルス(HBV)による感染症です。
感染経路には、血液、垂直(母子感染)、性行為があります。
血液感染には、輸血、麻薬の回し打ち、刺青などの他に、医療者の針刺し事故などが含まれます。
現在では、急性肝炎としては、性行為が最も多い感染経路です。
B型は劇症化することがあり(1%程度)注意が必要です。

<症状>
臨床経過は、前駆期→黄疸期→回復期とA型とほぼ同じです。
ただし、劇症化すると、肝性脳症などの症状を呈します。

<血液検査>
トランスアミナーゼ(AST、ALT)の上昇、胆道系酵素(ALP、γ-GTPなど)の軽度上昇がみられます。
B型肝炎のマーカーとしては、HBV抗体(HBc抗体、HBe抗体、HBs抗体)とHB抗原(HBe抗原、HBs抗原)があります。
HBV抗体の出現する時間的な順序もこの順番で、c→e→sです。
HBV抗原としては、HBe抗原、HBs抗原が重要です。これらは肝炎の活動指標として重要です。

<治療>
急性期は安静臥床、対症療法となります。HBVの慢性肝炎ではエンテカビル、 ラミブジンが使われますが、急性肝炎では使われません。

<予防>
針刺し事故による感染を防ぐ目的で医療者はワクチン接種を行っています。
また、垂直感染の予防に、母親がHBV感染者(HBs抗原陽性)の場合に、新生児に対して、 HBs抗体ヒト免疫グロブリン(出生時と2ヶ月後の2回)とHBワクチン(2,3ヶ月時と5ヶ月時の2回)が行われます。

▼C型急性肝炎

C型肝炎ウィルス(HCV)による感染症です。感染経路は、主に血液で、輸血により生じたと考えられるケースが多いですが、 感染経路が不明なケースも多くみられます。
急性肝炎の症状としては非常に軽いことが多く、自覚症状を呈さない場合もあります。
C型肝炎が問題となるのは慢性化率が高いためです。

▼D型急性肝炎

D型肝炎ウィルス(HDV)による感染症です。感染経路は、主に血液です。 HDVが増殖するにはHBVが必要であり、HBV感染と同時にHDVに感染するか(共感染)、元々、HBV感染があった上で HDV感染するか(重感染)のどちらかです。

▼E型急性肝炎

E型肝炎ウィルス(HEV)による感染症です。
HEVはイノシシや鹿などの肉を不十分な加熱で食べた場合に、 感染します(経口感染)。
慢性化することはありませんが、劇症化することがあり、注意が必要です。