自己免疫性肝炎
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自己免疫性肝炎(AIH:autoimmune hepatitis)

▼AIHの概念

中年以降の女性に好発し、自己免疫的な機序により肝細胞障害を生じる慢性肝疾患です。

抗核抗体(ANA)、抗平滑筋抗体(ASMA)、肝腎ミクロゾーム(LKM)1型抗体などの自己抗体が血清中に出現します。

T型が抗核抗体(ANA)や抗平滑筋抗体(ASMA)が陽性になるタイプで最も多いです。抗平滑筋抗体の意義は不明です。
U型が肝腎ミクロゾーム(LKM)1型抗体(チトクローム酵素(CYP2D6)が抗原)が陽性になるタイプで、 まれですが若年にみられ急速に進行し数年で肝硬変に至る 予後不良の疾患です。
V型が可溶性肝抗原抗体(SLAA)が陽性になるタイプです。

HLA−DR4の関連がいわれています。

自己免疫性肝炎で患者ではHCV陽性患者が多いですが、2つのケースが考えられています。
1つはHCV感染により免疫的な異常が生じLKM-1抗体が陽性になったケースです。病態の本質はHCV感染なので HCV感染の治療を行うことになります。
もう一つのケースが本当のAIH(多くはT型)を合併したHCV感染症で、AIH発症の素因を持つ場合にHCV感染により AIHが発症するという仮説が考えられていますが詳細不明です。

▼AIHの症状

肝障害を反映して、倦怠感、黄疸、食欲不振、発熱、嘔気などが みられます。肝障害の程度によっては、無症状の場合もあります。

AIHは他のシェ−グレン症候群、慢性甲状腺炎、関節リウマチなど他の自己免疫性疾患を 合併することがあります。その場合、それらの疾患による症状を呈することがあります。

▼AIHの検査

<血液検査>
肝細胞の破壊によりトランスアミナーゼ(AST、ALT)の上昇、アルブミンの低下などがみられます。
また、本症ではB細胞の機能が亢進し高γグロブリン血症が見られます。

自己抗体の出現が重要で、T型では抗核抗体と平滑筋抗体、U型では肝腎ミクロゾーム抗体、 V型では可溶性肝抗原抗体がみられます。
診断にあたっては、肝炎ウイルス、アルコール、薬物による肝障害などを除外する必要があります。

<生検>
ウィルス慢性肝炎とほぼ同じですが、活動性であることが多く線維化が顕著で、 形質細胞の割合が高いとされます。

▼AIHの治療

ステロイドが有効です。
ステロイドに反応しないケースや 副作用により使用できない場合には、免疫抑制剤のアザチオプリンなどが使われます。

また、AIHではHCV感染が優位に多いことが知られています。この場合、 HCVに対する治療を考えればIFNなどになり、AIHと考えるとステロイド、と相反する治療になり、 悩みどころとなります。