精神科総論とICD-10、DSM-W
▼精神科でなぜ薬物療法が有効か
現在の精神科の治療は薬物療法が中心といっていいと思います。
しかし、精神科の疾患は精神つまり心の病気であり、心の問題に対してなぜ薬物が有効なのか腑に落ちないところも
ありました。
生理学的には、統合失調症はドーパミンの過剰、うつ病はセロトニンの不足といった説が有力で、
薬理学的には抗精神病薬はドーパミン受容体をブロックする、抗うつ薬はセロトニンを増やすといった機序が
いわれています。
その意味で精神科の薬は非常に根本的な部分に作用しているともいえ実際に治療効果も認められています。
また、精神科医になる―患者を“わかる”ということ (中公新書)
で冒頭の方に、薬物が有効であることを表現するのに「精神科の薬は構造に利く」という言葉を使っています。
ここでいう構造は器質的な意味でも機能的な意味でもなくてもう少し大きな枠組みのことをいっているようです。
なかなかイメージしにくい部分もありますが、薬物療法が根治的な治療となりえることを表現しているように
思えます。
▼カウンセリングについて
現在の精神科の治療は薬物療法が中心ですが、カウンセリングも行われます。
カウンセリングは安全な治療と思いがちですが、実際には
下手なカウンセリングでは逆に病気が悪化することがあり、注意が必要です。
▼ICD-10、DSM-W
世界的に有名な精神疾患の診断基準にICD-10とDSM-Wがあります。
ICD-10は、世界保健機構(WHO)によって作られている分類で、
国際疾患分類といいます。
現在は、その第10回改訂版です。
ICD-10は、精神疾患だけでなく、あらゆる疾患を分類しており、第5章が、
「精神および行動の障害」の分類になっています。
厚生省の統計などでは、ICD-10が使われています。
DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-W)は、
アメリカの精神医学会によって作られた診断基準で、
現在は、その第4版です。
・精神疾患の薬物療法ガイド
精神科に関する教科書は治療に関してはさらっと書いてある程度なので、もう少し専門的に知るには有効かと思います。
・精神科セカンドオピニオン―正しい診断と処方を求めて
誤診が多いといわれる精神科ですが、多いかどうかはわかりませんが少なからず誤診はあるようです…
・精神科医になる―患者を“わかる”ということ (中公新書)
新書ですが、精神科に関するいくつかの疑問に答えてくれる良書だと思います。
・精神科薬物治療を語ろう―精神科医からみた官能的評価
精神科の薬は薬理学的な機序が明らかになってきていますが、それだけでは十分説明できない
ことも多いことも事実だと思います。
その意味でも精神科医が精神科の薬についての評価を語っている本書は興味深いと思います。