統合失調症
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統合失調症(schizophrenia)

▼統合失調症の概念

統合失調症は、「主として思春期に発病し、特徴的な思考障害、自我障害、感情障害、 人格障害などを主徴とし、多くは慢性的に経過する原因不明の精神病」です。

かつて精神分裂病といわれていましたが、平成14年から名称が変わりました。

厚労省のデータでは、「精神および行動の障害」の患者の平均入院日数は約300日と極端に長いです。
精神科入院患者の内、統合失調症が占める割合は約60%と高く、 精神科における最も重要な疾患といえます。

有病率は報告により様々ですが、大雑把に100人に0.5人程度とされています。

症状からは急性期と慢性期あるいは急性期、回復期、安定期に分けることができます。

急性期では幻覚や妄想が主体で、急性期を過ぎた後は、ある程度まで少しずつ回復しますが、 活動性が低下したり行動のレパートリーが少なくなったりすることもあります。しかし、 周囲のサポートがあれば十分に社会復帰できるケースがほとんどです。

統合失調症は今のところ原因不明ですが、何らかの生物学的原因による 中枢神経機能の脆弱性がベースにあり、環境因、 心因により症状を形成すると考えられています。

遺伝的な要因が関与していることは明らかですが、その詳細に関しては現在も不明です。

統合失調症の成因には様々な仮説が立てられていますが、治療薬としてドーパミン拮抗薬が有効であることからも ドーパミンの過活動を原因とする仮説や最近ではセロトニンの関与も注目されています。

統合失調症の病前性格としては、自閉傾向(非社交性、控えめ、生真面目など)、 精神的感受性の亢進(内気、臆病、繊細、 神経質など)、精神的感受性の低下(従順、無頓着、鈍感など)が言われていますが、必ずしもそうともいえないようです。

▼統合失調症の症状

陽性症状と陰性症状にわけて考えることがあります。

陽性症状は、幻覚、妄想などの思考障害などです。

幻覚には、幻聴が多いですがその他幻視なども見られます。

妄想には、妄想気分、妄想知覚、妄想着想といった一次妄想があります。 妄想気分は、世界が破裂するといった世界没落体験が典型的です。
妄想知覚は猫が歩いてるのを見て「家族に不幸があった」と確信したりすることで、 妄想着想は「私は神だ」と確信したりすることです。
これらの了解不能な妄想を一次妄想といいます。

統合失調症に比較的特徴的なのが自我障害で、他人の考えが入ってくると感じる考想吹入、 自分の考えが他人に伝わっていると感じる考想伝播や奪われると感じる考想奪取、 自分の考えが他人に知られていると感じる考想察知などがあります。
自生思考も自我障害といえます。

思考障害には、その他、連合弛緩や思考途絶などがあります。
連合弛緩は話の文脈にまとまりがないことで、思考途絶は思考が急に停止しまた動き出すといったものです。

陰性症状は、感情鈍麻と平板化、無感情、意欲・自発性欠如、会話の貧困などです。
極度の抑うつというイメージです。
陰性症状に抗うつ薬が有効な場合もあり、うつ病との関連もいわれています。

▼統合失調症の分類

統合失調症は、ICD-10では、妄想型(F20.0)、破瓜型(F20.1)、緊張型(F20.2)、単純型(F20.6)、 鑑別不能型(F20.3)に分類されます。

妄想型は、30歳以降に発病することが多く、妄想、幻覚などの陽性症状を主として慢性に経過するタイプです。

破瓜型は、青年期(15〜25歳)で発病し、感情鈍麻、無感情、意欲・自発性欠如、自閉など陰性症状が 前景に立ち、慢性に進行する予後不良な病型です。DSM-Wでは解体型が相当します。

緊張型は20歳前後で発病し、緊張病症候群を呈し病勢憎悪を反復するが重篤な情意障害を 残すことは少ないタイプです。
緊張病症候群は了解不能な運動暴発や衝動行為などの興奮、意識はあるのに自発運動が停止する昏迷の どちらか一方が、あるいは 興奮と昏迷が交互に出現します。

単純型は破瓜型に似ているが、陽性症状は少なくまた高度の人格障害に至ることはないタイプです。

▼統合失調症の診断

統合失調症は基本的には精神症状から診断されます。
統合失調症に生じやすい精神症状はいくつもあり、 自我障害は比較的特徴的とされますが、それだけで統合失調症と断定できる精神症状はありません。

精神症状と症状の経過、既往歴、家族歴などを総合的に検討し類縁疾患と 鑑別した上で診断されます。

初発の場合は、鑑別診断として器質精神病があり、CT・MRIなどの画像検査や髄液検査などで それらを除外する必要があります。
アルコールや覚醒剤(アンフェタミンなど)で精神症状が統合失調症と酷似しており、 これらの既往歴がある場合には鑑別は必ずしも容易ではありません。

▼統合失調症の治療

急性期には積極的な薬物療法を行い、 安定期には維持薬物療法を続けるとともに心理社会的治療を開始します。

薬物療法としては、ドーパミンD2受容体拮抗作用を持つ抗精神病薬が使われますが、最近では副作用が少ない 抗精神病薬非定型抗精神病薬と呼ばれるリスペリドン、オランザピン、ペロスピロン、クエチアピン、アリピプラゾールが 治療の主流になっています。

脳内のドーパミン系は大きく、大脳皮質系、大脳辺縁系、黒質線条体系、漏斗下垂体系の4つがあります。
統合失調症は大脳辺縁系におけるドーパミン系の異常と考えられており、 抗精神病薬の大脳辺縁系のD2受容体への作用が治療効果となります。
しかし、抗精神病薬は他の部位のドーパミン受容体に対しても作用するために副作用が生じます。
大脳皮質系に対する作用として陰性症状様の落ち込み
黒質線条体系への作用としてパーキンソン症候群、錐体外路症状、アカシジア
漏斗下垂体系への作用として高プロラクチン血症
また、抗精神病薬はドーパミン受容体のみではなくアセチルコリン受容体にも作用するために便秘、口渇、低血圧などが 生じます。さらに、ヒスタミン受容体に対する作用として眠気、体重増加などがあります。

陽性症状が主体であれば、特にリスペリドン(リスパダール)やオランザピン(ジプレキサ)を使うことが多いと思います。
副作用の観点からは、 リスペリドン(リスパダール)はD2受容体、5−HT2受容体の選択性が高く、 非定型の中ではパーキンソン症候群を呈することが多い薬とされ、 オランザピン(ジプレキサ)はMARTAに分類されヒスタミン受容体やアセチルコリン受容体にも作用し 高血糖や肥満の副作用の頻度が高いです。
したがって、高齢者では リスペリドン(リスパダール)は使いにくく、肥満患者ではオランザピン(ジプレキサ) は使いにくくなります。患者の状態に合わせて治療薬が選択されます。
なお、オランザピン(ジプレキサ)は陰性症状にも効果があるとされます。

アリピプラゾール(エビリファイ)はドーパミンD2受容体の部分アゴニストで最も新しい第2世代、 あるいは第3世代の抗精神病薬ともいわれます。
リスペリドンでみられる錐体外路症状やオランザピンでみられる高血糖、体重増加などの代謝異常が出にくい 一方で、睡眠障害の頻度が高いとされます。

抗精神病薬の併用に関しては、特に第2世代の薬剤では副作用が少ないというメリットが相殺されてしまうため 推奨されていないようです。
単剤で効果が不十分な場合には、薬剤の切り替え、増強療法として高力価のベンゾジアゼピン系薬剤や バルプロ酸ナトリウムが併用されます。

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