肝癌(肝細胞癌)
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肝癌(肝細胞癌)

▼肝癌の概念

肝癌には、原発性肝癌と転移性肝癌があります。頻度としては後者が多くなっています。 大腸癌がもっとも多く、胃癌、平滑筋肉腫、カルチノイドなどが続きます。

原発性肝癌には、肝細胞癌と胆管細胞癌がありますが、前者が多く95%を占めます。
以下、肝細胞癌について述べます。

肝細胞癌の95%以上に肝炎ウィルスの持続感染が見られます。その内70%がHCV感染で20%がHBV感染です。

HCV感染例ではほとんどが肝硬変に至ってから発癌しますが、HBVはDNAウィルスであるためHBV遺伝子が肝細胞に 組み込まれて発癌すると考えられており、肝硬変に至る前でも発癌が見られます。
したがって、HBV感染による肝細胞癌患者はHCV感染による肝細胞癌患者よりも若くなります

▼肝細胞癌の症状

ベースに肝硬変がある場合、肝硬変による症状がメインで、癌に特徴的な症状はあまりありません。
癌が大きくなると腹痛などを呈しますが、大きくなった癌が破裂して、腹腔内出血を来たし、急性腹症を呈して 病院に担ぎ込まれることもあります。

▼肝細胞癌の検査

画像検査ではスクリーニングとして腹部エコーが重要です。
HBV、HCVの持続感染者では定期的に検査が行われます。
典型的には肝細胞癌は被膜に覆われており、「鮮明かつ平滑な境界」、「薄い辺縁低エコー帯」がみられ、 腫瘍内部は、「モザイクパターン」、「内部エコーの星形無エコー域」を示します。 「後方エコー増強」「外側陰影」も見られます。
最近では、Sonazoidなど超音波でも造影剤が使われはじめており、今後、重要性を増してくる可能性があります。

・「Sonazoid造影エコー法」 工藤 正俊 消化器画像 9巻5号(2007.09)P.423

エコーで癌が疑われた場合、造影CT、特にダイナミックCTを行います。
典型的には肝細胞癌は早期濃染がみられます。
肝細胞癌エコー
(96回医師国家試験A29)

肝細胞癌はその分化度によっては、エコーやCTのみでは診断が付きにくい場合もあります。
その際には、MRI造影の一種であるSPIO検査なども行われます。

血液検査としては、腫瘍マーカーにAFP、PIVKA-Uがありますが、早期診断には使えません。

▼肝細胞癌の治療

肝細胞癌には様々な治療がありますが、生存率が高い順としては、

1.外科的肝部分切除
2.ラジオ波焼灼療法(RFA)≒(>)経皮的エタノール局注療法(PEIT)
3.経カテーテル肝動脈塞栓術(TAE)
4.化学療法

となっています。

生存率が高いのだから、外科的肝切除を行えばいいと考えられますが、 肝機能が低下している場合には切除後に肝不全となるリスクがあるため、肝の予備能や切除範囲の 兼ね合いで適応がきまります。

2.のRFAやPEITは局所的な治療で、患者への負担は小さいですが、3cm以下で3個以内の腫瘍に限り行われます。
RFAの方が効果が高いという報告がありますが、肝細胞癌の場所によっては焼くことが難しい場合もあります。

3の経カテーテル肝動脈塞栓術(TAE)は、外科的切除やRFAが行えない場合に考慮されます。 癌が大きくても適応となることがあります。しかし、 門脈本幹や一次分枝に腫瘍塞栓がある場合には適応外となります。
最近では、治療効果を高めるために、化学療法、特に選択的動注療法をTAEと同時に行うことがあります。
これらの治療が行えない場合に、化学療法(選択的動注療法)が行われています。
また、近年は生体肝移植が行われていますが、これは、肝機能が低下している症例、肝硬変症例などに行われます。
慢性肝炎がベースにある場合、根本的な治療としての意味合いもあり、非常に効果が期待されますが、 ミラノ基準の適応としては「単発癌であれば直径が5センチ以下、多発癌であれば すべて直径が3センチ以下で数は3個まで」となっています。