急性腎不全
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急性腎不全

▼急性腎不全の概念

腎不全は、尿がほとんど(あるいは全く)出ない状態といえます。

尿が出なくなるのは、腎臓の機能を考えると、濾過されないためといえそうです。
GFR(糸球体濾過量)が低下した状態です。

腎不全には急性と慢性があります。

急性腎不全はその原因により腎前性、腎性、腎後性の3つに分かれますが、結果的にGFRが 低下するのは共通かと思います。


腎前性は腎臓に血液が来ないために尿が作られない状態で、出血性ショックや心不全、脱水などが原因となります。
腎臓に血液が来なくなればGFRは低下します。

腎性は糸球体が壊れた場合尿細管が壊れた場合(急性尿細管壊死) の2つが考えられます。

前者には急速進行性腎不全などがあります。
糸球体が壊れた場合に濾過が行われなくなるのは想像が容易です。

後者の急性尿細管壊死は尿細管が壊死をしてしまうことですが、色々な原因があります。
腎前性腎不全が続くと尿細管に尿がこないので尿細管は虚脱し壊死してしまいます。
また、薬剤(腎毒性のあるシスプラチン、造影剤、アミノグリコシドなど)、ミオグロビン、Bence-Jones蛋白 (多発性骨髄腫)、カドミニウムなども 尿細管壊死の原因となります。
ミオグロビンやBence-Jones蛋白は尿細管を詰まらせ、 その先の尿細管が虚脱してしまいます。
尿細管が壊死してしまうと、濾過が起こっても、その先に尿が進めなくなるために 行き場がなくなった尿が壊死している手前に溜まります。圧が上がって、 糸球体内圧よりも高くなると濾過が行われなくなります。

腎後性は尿管や膀胱などが詰まったために尿が出なくなった状態です。
最初は濾過が行われていても、行き場を失った尿が溜まってしまうために尿細管内やボウマン嚢内の 圧が高くなり、濾過が行われなくなります。

▼急性腎不全の概念症状

症状は腎不全の重症度や原因によっても異なりますが、腎性腎不全の場合、一般的には、 初期に乏尿となります。乏尿は1日に尿が400ml以下になることです。
ちなみに正常であれば尿量は1日0.5l〜2L程度です。

乏尿になるので、体内に水が貯留し、浮腫や高血圧、肺水腫となります。

そして、尿として出るはずの代謝性老廃物(特に窒素性老廃物)が体内に蓄積するので、 疲労感、食欲減退、吐き気、掻痒(かゆみ)が起こります。

また、電解質の調節が行われないために電解質異常の症状が出ます。
腎不全では濾過が行われず尿が出せないので、基本的には、余分な電解質成分が溜まり、 イオン濃度は高くなりそうです。
実際、HやK、P(リン)は体外へ排出されず上昇 します(高K血症では不整脈となり心停止に至ることがあり特に注意が必要)。


しかし、NaやCaは低下します。
Naに関しては、確かにNaの排出もされないのですが、それ以上に水が排出されないために、 相対的にNa濃度は低下することが多いようです。
Caの低下はPの増加が影響します。 血清P×血清Ca値は一定値となるためPが高値となればCaはリン酸カルシウムとして 骨化して下がること、また、腎不全ではビタミンDの活性化障害が起こり、食事からのCaの吸収が阻害されることも Caが下がる要因となります。

▼急性腎不全の概念検査

窒素性老廃物の上昇は尿素窒素(BUN)とクレアチニン(Cre)値の比で評価します。
BUN/Creは正常であれば10程度ですが、腎前性腎不全では20を超えることもあり、 腎性腎不全では15〜20程度となります。

腎不全になると濾過や行われなくなり、電解質に異常が生じます。
腎不全になると代謝性アシドーシス(高H+血症)、低Na血症、高K血症、高P血症、低Ca血症になります。

高K血症は、Kの排泄が行われないこと、体内でHが増加するために 細胞外のHと細胞内のKの交換が 起こるために生じます。

▼急性腎不全の概念治療

窒素性老廃物の上昇や電解質の異常が顕著ならば透析を考えます。

また、腎不全が生じた原因に対しても治療を行うことが重要です。

急性腎不全では、早期を乗り切れれば予後は良好なことが多いです。