胃・十二指腸潰瘍
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胃・十二指腸潰瘍(ulcer)

▼胃・十二指腸潰瘍の概念

潰瘍は粘膜筋板を超えて生じた病変で、 治癒と再発を繰り返すようになると消化性潰瘍といわれます (急性潰瘍は急性胃粘膜病変(AGML)とはいうが消化性潰瘍とはいわない)。
胃に出来た場合を胃潰瘍、十二指腸に出来た場合を十二指腸潰瘍といいます。
潰瘍は、胃酸による攻撃因子の割合が大きくなるために生じるため、 胃潰瘍は幽門側、十二指腸は胃に近い球部に好発します。

症状の違いとしては、胃潰瘍の場合は食後に腹痛を来たし、 十二指腸の場合は食間に腹痛を来たすとされています。

胃潰瘍は、かつてはストレスが主な原因とされていましたが、現在では、ピロリ菌感染を原因とする場合が多いと 考えられています。その場合、治療はピロリ菌除去が有効です。

潰瘍ができる原因として、胃酸の分泌が亢進している状況が考えられます。
したがって、胃酸分泌が高まる 高カルシウム血症や高ガストリン血症では胃潰瘍が好発します。

高カルシウム血症となる疾患として副甲状腺機能亢進症などが考えられ、また、 高ガストリン血症となる疾患としてZollinger-Ellison症候群(ガストリン産生腫瘍)などが 考えられます。

胃潰瘍をみたときにこれらの基礎疾患の有無を考えることは重要です。

▼胃・十二指腸潰瘍の症状

胃・十二指腸潰瘍では、腹痛を来たします。
潰瘍が血管まで到達すると出血を来たし、吐血や下血を起こします。

また、潰瘍が深くなりすぎると、消化管に孔が開きます(穿孔、穿通)
十二指腸は胃よりも壁が薄いため、穿孔を来たしやすいです。
穿孔した場合には、腹膜炎を併発し、激しい腹痛、腸蠕動音の消失、腹膜刺激症状(筋性防御、反跳痛、Blumberg徴候) がみられます。空気が肝臓上部へ移動するために肺肝濁音界の消失といった身体所見もみられます。
穿孔が疑われる場合には、内視鏡検査は感染のリスクを増すなどの理由でかつては禁忌とされていましたが、 最近では行うようです。
バリウムによる造影は禁忌です。水溶性のガストログラフィンなら造影検査ができるようです。

また、特に十二指腸潰瘍では瘢痕により狭窄を来たすことがあります。通過障害 となるので食後に嘔吐を来たすようになります。

▼胃・十二指腸潰瘍の診断

<上部消化管造影>
潰瘍は陥凹病変なのでバリウムの溜まりが見られます(niche:ニッシェ)。
また、潰瘍が再発と治癒を繰り返している場合、難治性の線状潰瘍となります。

<内視鏡>
活動期では充血や発赤、白苔、時には出血が見られます。
胃・十二指腸潰瘍
(97回医師国家試験D27)

<ピロリ菌検査>
胃潰瘍も、ピロリ菌感染が大きなウェイトを占めていると考えられており、 ピロリ菌感染の有無(生検標本、培養、尿素呼気試験、抗体検査)を調べます。

▼胃・十二指腸潰瘍の治療

薬物療法としては、H2ブロッカー、PPI(プロトンポンプインヒビター)が使われます。

ピロリ感染があれば、除菌療法が行われます。

吐血などがあり、緊急に止血が必要な場合には、エタノールやアドレナリンの局所注入、 出血部位の焼却などがおこわなれます。

穿孔を呈した場合には、絶食と抗生物質の保存治療が優先されますが、緊急手術となる場合があります。