感染性心内膜炎(IE:infective endocardititis)
▼感染性心内膜炎の概念
感染性心内膜炎は、病原体が弁膜などの心内膜に付着したために生じる感染症です。
原因菌の多くは、グラム陽性細菌です。
経過の違いから、急性(数日)と亜急性(数週間~数ヶ月)に分かれます。
急性心内膜炎を起こすのは、黄色ブドウ球菌などで、亜急性の経過をたどるのは、
緑色連鎖球菌、腸球菌、表皮ブドウ球菌などの弱毒菌です。
心内膜炎の発症機序ですが、
1.血流ジェットによる心内膜の損傷
2.心内膜損傷に対して血小板やフィブリンなどによる修復が行われる
3.修復によりできた血栓を足場に細菌が繁殖
となります。
したがって、心室中隔欠損症、動脈管開存症などの先天性心疾患、僧帽弁閉鎖不全症、肥大型心筋症などでは、
血流ジェットが生じるので、弁尖やその周囲組織の損傷が起こり心内膜炎が好発します。
▼感染性心内膜炎の原因
感染性心内膜炎が生じるには、細菌が血管中に侵入することが必要です。
一般的なのが、抜歯で、抜歯の際には出血を来たしますが、
その際に大量の菌が入りこむためと考えられています。
したがって、抜歯時には本症を予防するために抗菌薬の投与が行われます。
また、虫歯自体が問題であるという報告もされています。
他に、有名なのが、麻薬常習者です。
不潔な針や注射器を介して細菌が直接血流に注入されやすいために、
感染性心内膜炎を発症しやすくなります。
▼感染性心内膜炎の症状
感染性心内膜炎は、全身の感染症なので、発熱が生じます。
また、感染性血栓が心臓から全身へとばら撒かれるために、
血管を閉塞します。Osler結節、Janeway斑点、皮膚の点状出血、爪下出血などが見られます。
血栓自体が大きくなることはまれですが、脳梗塞、心筋梗塞を引き起こすこともあります。
▼感染性心内膜炎の聴診所見
弁尖に病変が生じるので心雑音を呈します。
本症では基礎疾患として何らかの心病変を持っていることが多いですが、新たに生じた心雑音は
本疾患を強く疑います。
▼感染性心内膜炎の検査
<血液検査>
全身感染症で細菌感染が多いのでCRP、白血球が上昇します。
また、詳細は不明ですがリウマトイド因子陽性、γグロブリン値上昇、補体価低下などの所見が見られます。
<血液培養>
起炎菌を明らかにすることができます。抗生物質投与前に行うことが望ましいです。常在菌が原因となることがあるため、
血液培養では2本サンプルをとってより診断を確実に行います。
<心エコー>
弁尖に付着した疣贅が見られます。
胸壁からのエコーで明らかでない場合、本症を疑ったら、経食道エコーも行います。
経食道心エコーは感度、特異度ともに経胸壁エコーよりも高いとされます。
▼感染性心内膜炎の治療
<内科的治療>
感受性のある抗菌薬を十分量投与します。中断により再び細菌が増殖するので最低4週間持続投与を行います。
<外科的治療>
内科的治療に反応しない心不全、抗生剤で軽快しない抵抗性感染、
繰り返す塞栓症状がある場合には手術を考慮します。