心不全の治療
▼急性心不全の治療
急性心不全は急激に心不全症状が出た状態で、元々慢性心不全があった場合と心臓病がなく急激に発症した場合の
2通りが考えられます。
急性心不全では、基礎疾患への対応、血行動態の改善による症状の軽快を目指します。
血行動態改善のための薬物療法は、利尿薬(ループ利尿薬、hANP)、硝酸薬、強心薬(カテコールアミン)を用います。
また急性心筋梗塞後には、ACE阻害薬が心臓リモデリングに対して有効であることが広く知られています。
薬物療法でも軽快しない場合には、補助循環のIABPやPCPSを考慮します。
▼慢性心不全の治療
高血圧、虚血性心疾患、心筋症などの様々な循環器疾患の臨床経過の果てに心機能低下を生じ、
末梢主要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を拍出できなくなった病態で、生活に支障を来たした状態
です。
治療はQOLの改善と生命予後の改善にあります。
慢性心不全の治療では、食事療法、運動療法、薬物療法が行われます。
食事としては細胞外液量の増加を防ぐために塩分制限が重要です。
運動療法は患者の状態に合わせて行います。
薬物療法はACE阻害薬、βブロッカーが中心になります。
ACE阻害薬とβブロッカーは慢性心不全の患者の予後を改善させたエビデンスがあります。
そのことは第103回医師国家試験にも出題されていました。
<ACE阻害薬>
心不全ではRAA(レニン→アンギオテンシン→アルドステロン)系が亢進しますが、
これは、アルドステロン作用による細胞外液量の保持→前負荷の増大、
アンギオテンシンの作用による血管収縮→後負荷増大、
を導くため、結果として心不全を増悪させます。
ACE阻害薬は、アンギオテンシンⅠ→アンギオテンシンⅡの変換酵素であるACEを阻害し、
RAA系による悪循環を断つことができ、結果として前負荷、後負荷ともに軽減させ、生命予後を改善します。
また、心臓リモデリングに対してACE阻害薬が有効であるという報告があります。
しかしACE阻害薬は腎機能が非常に悪い場合(クレアチニン値>3.0mg/dl)や両側性腎血管性高血圧では、
輸出細動脈の弛緩を来たすために糸球体内圧が急激に低下し一挙に腎機能が悪化することがあるために使えません。
臨床的には、ACE阻害薬で腎機能悪化をみた場合には腎血管性高血圧を疑う必要があります。
<βブロッカー>
βブロッカーは拡張型心筋症(DCM)で有効性が認められた後、その他の慢性心不全でも有効性が認められたエビデンスの
ある薬です。
心臓にあるβ1受容体をブロックし心拍数を減少させることで心筋負荷を減らします。
また、腎臓にあるβ受容体をブロックすることでレニン分泌を抑制し、ACE阻害薬と同様に
体液貯留や血管収縮を抑制する効果もあるようです。