拡張型心筋症(DCM:dilated cardiomyopathy)
▼拡張型心筋症の概念
拡張型心筋症は、心室の拡張と収縮不全を来たす原因不明の疾患です。
収縮力低下のために拍出力低下となり心不全になります。また、心室が拡張するために電気的な興奮に異常が生じて
高頻度に不整脈を合併する予後不良な疾患です。
原因は不明ですが、遺伝因子を背景として、コクサッキーB群ウイルスによるウイルス性心筋炎などが契機となり、
遷延する自己免疫異常によって生じることも多いと考えられています。
家族性発症の頻度は高くありません。
▼拡張型心筋症の症状
心筋が傷害されて血液を送り出すことが困難になるため、多くは労作時の呼吸困難などで始まり、
後に、易疲労感などの左心不全症状、肝腫大、頸静脈怒張などの右心不全症状を呈します。
また、心筋が拡張することで心房細動(Af)、期外収縮、心室頻拍(VT)などの不整脈を合併します。
突然死することもあります。
▼拡張型心筋症の聴診所見
容量負荷のためにV音を生じます。また圧上昇も来たした場合にはW音も生じ、T、U、V、W音が聴こえ、 また脈拍数も高くなっていることが多いために、 あたかも馬が走っているかのような聴診所見となり奔馬調律(ギャロップ)と呼ばれます。
▼拡張型心筋症の検査
<胸部X線写真>
著しい心陰影の拡大が見られます。
また、肺うっ血や胸水貯留の所見が見られます。
(第98回医師国家試験D22問題)
<心電図(ECG)>
ST-T異常、末期では低電位(low voltage)を呈し、不整脈(期外収縮、Afなど)が見られることもあります。
<心エコー>
左室拡大の所見が見られます。
(第96回医師国家試験C7問題)
<心カテーテル検査>
左室拡張期圧の上昇、左房圧や肺動脈楔入圧の上昇が見られます。
▼拡張型心筋症の治療
治療は心不全の対症療法中心となります。
ACE阻害薬とβ遮断薬には長期予後を改善したというエビデンスがあります。
ACE阻害薬は心筋リモデリングの抑制効果があるとされ早い段階から投与されます。
心房細動、心不全徴候がある場合にはジゴキシンが使われます。治療幅が狭く、低K血症、VTなどの合併に
注意が必要です。
また、利尿薬も使うこともあります。
薬物治療でコントロールできなければ、心臓移植を行う必要があります。
また、最近、小説やドラマでバチスタ手術(左室縮小形成術)が有名になりました。
・バチスタ手術とは(須磨久善先生のサイト)
・バチスタ手術−須磨久善先生に聞く