肺高血圧
▼肺高血圧の概念
安静時の肺動脈平均圧が25mmHgを超えると肺高血圧症と診断されます。
肺高血圧は、心臓や肺の疾患で生じることがほとんどです。
よく電圧、電流、抵抗のオームの法則で例えられるように、
血圧=血流量×抵抗(ちなみにオームの法則は電圧=電流×抵抗)
で示されるので、
肺高血圧となる機序は、右辺の肺血流が増加する場合と、
肺血管抵抗が増加する場合が
考えられます。
肺血流が増加する疾患の代表が、心臓の先天性疾患で、左-右シャント疾患(心房中隔欠損症、心室中隔欠損症など)
などがあります。
肺血管抵抗が増加するのは、肺血管自体が損傷することで抵抗が高くなる、原発性肺高血圧症、Eisenmenger症候群、肺血管炎
などがあります。
他に、肺の血管は、酸素分圧が低くなると血管平滑筋が収縮して血管が細くなり抵抗が増加するため、
換気障害により低酸素
が続く場合に、肺高血圧となります(肺線維症など)。
▼肺高血圧の症状
肺高血圧があると、肺へと血流を送り出している心臓(右心系)の負荷が増大します。
その結果、労作時の息切れ、呼吸困難などの症状が出てきて、最終的には、右心系が疲れ果てて、右心不全となります。
右心不全になると、心拍出量が低下するため、右心系の手前の静脈系に血液鬱滞が生じ、
肝臓の腫大や全身の浮腫が生じるようになります。
▼原発性肺高血圧
原発性肺高血圧症は、心臓や肺などに異常が認められないのに未知の機序で肺高血圧となる疾患です。
年間、人口100万当たりおよそ1〜2人の発症と考えられている希な疾患で、若い女性によく見られます。
初期は無症状ですが、進行すると、労作時の息切れ、労作時呼吸困難などの症状が出てきて、
右心不全となります。症状が出来てきた頃には、肺高血圧が相当進んだ状態となっており、治療法もなく、予後は
非常に不良です。