精神科疾患(てんかん、統合失調症、気分障害)の合併症妊娠
中枢神経作動薬は一般的に脂溶性なため胎盤通過性のものが多く、特に薬剤が胎児へ及ぼす影響に関して注意が必要です。
<てんかんへの妊娠の影響>
妊娠によるてんかん発作の発生頻度ですが、70%以上の症例で妊娠中の発作頻度は変化せず、
約20%で増加、約10%で減少という報告があります。
<てんかんによる胎児への影響>
最も重要なのが抗てんかん薬が胎児に及ぼす影響です。
バルプロ酸(デパケンなど)は児に二分脊椎をもたらすために原則禁忌とされます。
カルバマゼピン、フェニトインも奇形リスクの増加となるようです。
特に併用による奇形リスクの増加がいわれています。
なお、抗てんかん薬は気分障害の躁うつ病などでも処方されていることがあり、注意が必要です。
奇形リスクを下げるために、抗てんかん薬の量をできるだけ減らすこと、多剤併用をやめて
できるだけ単剤とすることが望まれます。
したがって、妊娠を望む場合、妊娠前に薬剤調整を行う必要があります。
妊娠中は抗てんかん薬の濃度モニタを行い、けいれん発作を防止します。葉酸濃度もモニタし低下していれば
葉酸投与を行います。
分娩後は抗てんかん薬がビタミンKを消費するためにビタミンKの静注を行います。
統合失調症患者の妊娠もまれではありませんが、抗精神病薬の副作用に高プロラクチン血症があるため、
妊娠しにくい状態ではあるようです。
ハロペリドール(セレネース)などは催奇形性があるために妊婦への投与は好ましくないようです。
非定型抗精神病薬のうちオランザピン(ジプレキサ)は、催奇形成のリスクは増加させないとされますが、
副作用に高血糖があり妊婦においても注意が必要です。
双極性障害(躁うつ病)の躁病期や気分安定効果、単極うつ病でも増強療法として用いるリチウム(リーマス)は、
催奇形成があります。特に心臓のEbstein奇形をきたす確率が400倍に上るとの報告があります。
カルバマゼピン(テグレトール)やバルプロ酸(デパケンなど)なども双極性障害、特に
躁状態で使われることがありますが、これらの薬剤も奇形リスクを増大されていることが報告されており、
注意が必要です。
単極のうつ病で用いられる抗うつ薬に関しては、三環系抗うつ薬は奇形などのリスクはないかそれほど高くないとされます。
一方、SSRIは比較的新しい薬剤で妊婦への影響は明らかではありませんが、パロキセチン(パキシル)はVSDのリスクが
増加したという報告があり、妊娠初期には好ましくないと考えられているようです。