巨赤芽球性貧血
▼巨赤芽球性貧血の概念
巨赤芽球性貧血は、骨髄で巨大な赤芽球(巨赤芽球)ができる貧血です。
出来損ないの巨赤芽球は骨髄中で破壊されるため無効造血
(骨髄で作ってはいるが、末梢血中に出て行かない)となり、貧血を来たします。
ただ、一部の巨赤芽球は赤血球となるため大球性を呈します。
巨赤芽球ができるのは、DNA合成に必要なビタミンB12または葉酸が欠乏
するためです。
ビタミンB12と葉酸が不足すると、核の成熟が障害されるため、細胞質のみが成長し巨大化します。
▼ビタミンB12欠乏症
ビタミンB12が欠乏する理由として、摂取不足と吸収不足があります。
摂取不足ですが、ビタミンB12は、動物性食品に含まれているので、極端な
菜食主義となったり、食事を取らなかったりした場合(アルコール中毒など)に、起こります。
吸収不足ですが、ビタミンB12は、胃から分泌される内因子(IF)というものとくっつくことで
小腸から吸収されます。したがって、内因子が分泌されなかったり、小腸に異常がある場合に、吸収不足
となります。
内因子が分泌されない理由としては、胃癌などで胃の全摘をした場合や、胃の粘膜萎縮を来たした場合があります。
小腸に原因がある例としては、小腸を切り取る手術を行った後(短腸症候群)や寄生虫感染などがあります。
▼悪性貧血
胃の粘膜萎縮を来たしたことが原因となって、ビタミンB12欠乏症となった場合を特に
悪性貧血といいます。
胃の粘膜萎縮の原因は自己免疫が考えられています。
内因子だけでなく胃酸の分泌も低下するために、消化器症状を訴えます。
ビタミンB12は、神経の髄鞘の維持にも必要なため、
亜急性連合性脊髄変性症(脊髄後索と側索が傷害)や末梢神経障害も来たします。
▼葉酸欠乏症
葉酸が欠乏する理由も、摂取不足と吸収不足が考えられますが、葉酸は体内に貯蔵できる量が
少なく、比較的容易に欠乏状態となります。
特に、成長が著しい時期や妊娠時、炎症性疾患時などでは、葉酸不足となりやすいです。
また、妊娠時には、葉酸不足により胎児の奇形(二分脊椎など)が生じることが報告されており、注意が必要です。
・神経管閉鎖障害の発症リスク
低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
▼巨赤芽球性貧血の検査
ビタミンB12欠乏も葉酸欠乏も大球性正色素性貧血となります。
また、好中球や血小板もビタミンB12や葉酸が必要なので、これらも減少します(汎血球減少)。
末梢血標本では、好中球の過分葉や血小板の奇形も見られます。
骨髄標本では、たくさんの巨赤芽球が見られます。
ビタミンB12欠乏によるのか葉酸欠乏によるのかは、血中のビタミンB12濃度、葉酸濃度
を計ることでわかります。
▼巨赤芽球性貧血の治療
ビタミンB12欠乏ならばビタミンB12を補充しますが、胃や腸に問題がある場合、
経口投与をしても無駄なので、筋肉注射とします。
葉酸欠乏の場合も、葉酸の補充を行います。