TOP>血液>遺伝性球状赤血球症
遺伝性球状赤血球症(HS:hereditary spherocytosis)
▼遺伝性球状赤血球症の概念
名前のとおり、赤血球が球状になってしまう遺伝性の疾患です。
球状になってしまう原因は、細胞の形を整える細胞骨格自体に異常があるためと
考えられていますが、その詳細に関しては不明な点もあります。
本症が溶血を来たすのは、球状赤血球が脾臓を通過できないためです。
脾臓を通過するには、赤血球が変形することが必要です。
通常の赤血球であれば容易なのですが、
古くなった赤血球や球状赤血球は変形することが困難となるため、脾臓にトラップされ、マクロファージに
貪食されてしまいます。
▼遺伝性球状赤血球症の診断
正球性正色素性貧血となり、網赤血球の増加があり、
血液検査上、間接ビリルビンの上昇、ハプトグロビンの低下、など溶血性貧血の所見も見られた
場合、本症を疑います。
末梢血標本では小型の球状赤血球が見られます。
また、本症では膜の脆弱性があるために、浸透圧抵抗試験で溶血が見られます。
浸透圧抵抗試験は、赤血球を低張食塩水に入れる試験です。
赤血球の浸透圧と低張食塩水とでは浸透圧に差があるために、赤血球内へ水が入ってきます。
膜が弱いために容易に溶血を来たす、というわけです。
自己溶血試験でも溶血を来たし、これらの所見から本症だと診断されます。
▼遺伝性球状赤血球症の治療
脾臓を摘出すると溶血することを抑えることができ、症状を軽快させることができます。
ただし、脾臓は免疫に関しても重要な役割を果たしているため、幼少期には行わず、学童期以降に
行うことが望ましいとされています。