ファロー(Fallot)四徴症(TOF)
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ファロー四徴症(TOF:tetralogy of fallot)

▼概念

Fallot博士が定義した、

・心室中隔欠損
・肺動脈狭窄(右室流出路狭窄)
・大動脈騎乗
・右心室肥大

の4徴をもつ先天性心疾患で、チアノーゼ性心疾患の代表例です。

▼血行動態

心室中隔欠損と右室流出路狭窄が病態の中心となります。

心室中隔の欠損が大きく、左室と右室の機能はほぼ一体となってしまい、 左右の圧に差がなくなります。
イメージとしては、左室と右室が合体して大きな1つの心室となっているところに、 細い肺動脈と大きな大動脈がある感じです。
この心室の血液は右房からの酸素飽和度の低い血液と左房からの酸素飽和度の高い血液が 混ざっている状態です。

血液が肺動脈へ行くか大動脈へ行くかは、肺血管抵抗と体血管抵抗の大きさにより決まります。
肺血管抵抗が低いときには肺へ行く血流が多くなり、ある程度の酸素飽和度が保たれ、 チアノーゼとはなりません。
しかし、体血管抵抗が低いときには大動脈への血流が多くなります。
この場合、肺へ行く血液が減るため、その内、酸素飽和度は下がりチアノーゼとなります。

▼症状と合併症

<症状>
生後直後は右室流出路の狭窄はさほどひどくなく、肺血流がある程度保たれるためチアノーゼとなりません。
生後数ヶ月すると成長とともに右室流出路の狭窄がひどくなり次第にチアノーゼとなります。

また、本症例ではしばしば低酸素発作を呈します。この理由は泣いたときなどに起こり、肺血管抵抗の 急激な上昇による肺血流の低下によるものと考えられます。
発作時には、蹲踞(そんきょ)の姿勢をとります。体血管抵抗を高くすることで肺血流量を上昇させる効果があります。 誰に教わらなくても自然にその姿勢をとるようになるようです。

<合併症>
本症でも感染性心内膜炎を起こすことがあります。
右−左短絡の疾患に共通ですが、合併症として脳膿瘍、脳血栓があります。
本症では酸素飽和度が低いために代償性に多血症となり血栓傾向が強くなります。そして、 肺はフィルターの役割をしていますが、右−左短絡があると静脈血が肺を経ずに大動脈へと流れるために生じます。

▼聴診所見

右室流出路狭窄のために収縮期駆出性雑音が聴取できます。
狭窄が強いと大動脈へと血液が流れるので雑音は弱くなります。

心室中隔欠損による雑音は生じません。欠損孔が大きく右室圧と左室圧が等しくなってしまうためです。

また、肺血流量が少ないでU音の肺動脈成分は聴こえなくなります。

▼検査

<血液生化学>
酸素飽和度が低いために代償性に多血症となります。EPOも増加しています。

<胸部X線写真>
肺血流量が低下するので左第2弓は陥凹し、左第4弓(左心室)は突出します。これを木靴心といいます。

<心電図(ECG)>
右室肥大、右軸偏位が見られます。

<心エコー>
心室中隔欠損、右室流出路狭窄、大動脈騎乗、右心室肥大が見られます。
カラードプラではシャントする血流が見られます。

<心カテーテル検査>
右室圧の上昇(≒左室圧)がみられ、右室流出路では狭窄の前後で圧較差が見られます。
シャントするために右室造影では肺動脈と大動脈の両方が造影されます。
また、血液ガス分析で大動脈の酸素濃度の低下が見られます。

▼VSDの治療

無治療の場合の予後は不良なため、早期の手術が望まれます。
根治術としては、心室中隔欠損のパッチ閉鎖+肺動脈狭窄の解除(右室流出路再建)になります。
しかし、乳児期などでこの手術に耐えられないと考えられる場合には、Blalock-Taussig(BT)術が行われることがあります。 これは、左右の鎖骨下動脈を肺動脈に吻合させることで、 大動脈→鎖骨下動脈→肺動脈の血流を作り肺血流量を増加させる手術です。

薬物療法としては低酸素発作時には酸素、輸液、βブロッカー、場合によってはモルヒネ(呼吸抑制(過換気防止)、 静脈還流減下による体血管抵抗の増加)を使います。βアゴニストやジギタリスは禁忌です。