急性心膜炎(acute pericarditis)
▼急性心膜炎の概念
急性心膜炎は、心膜に炎症が生じたもので、その原因は、
感染症(コクサッキーウィルスが多い)、カポジ肉腫など悪性腫瘍の心膜転移、膠原病(SLE、リウマチ熱)、
尿毒症、心臓手術後(心膜切開後症候群と呼ばれ自己免疫反応が考えられている)、心筋梗塞後(Dressler症候群など)
などです。
▼急性心膜炎の症状と聴診所見
心膜の炎症により胸痛を呈します。吸気時に増悪しますが、
静脈還流量が増加して心膜がより進展するためと考えられます。また、前かがみになることで軽快します。これらの
特徴は他の疾患ではみられにくいので鑑別に有用です。
また、本症は心タンポナーデを合併することが多く、右心不全徴候を呈することがあります。
聴診では、高調性の擦れるような音(心膜摩擦音)が聴取できます。
▼急性心膜炎の検査
<血液生化学検査>
炎症所見がみられます。また、心筋炎を合併すると逸脱酵素(AST、LDH、CK)等の上昇が見られます。
<心電図(ECG)>
広範囲の誘導で軽度ST上昇が見られます。冠動脈支配域との関係がないため心筋梗塞との鑑別は容易です。
<心エコー>
心タンポナーデを合併すると心膜液貯留(echo free space)が見られます。
▼急性心膜炎の治療
心タンポナーデや心筋炎を合併するリスクがあるので原則入院し安静、厳重な経過観察を行います。
そして、原疾患に合わせた治療を行い、細菌感染ならば抗生剤、尿毒症ならば透析、心膜切開後症候群や
Dressler症候群ならばステロイドを用います。