発作性上室性頻拍
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発作性上室性頻拍(PSVT:paroxysmal supraventricular tachycardia)

▼発作性上室性頻拍の概念

上室(心房や房室接合部など)に由来する発作性の頻拍症で、多くは リエントリー(再入)により生じます。
リエントリーは伝導速度と不応期に違いのある2つの伝導路(たとえばαとβ) があるときにαを通った興奮が逆向きに他のβを通って再び元のαに戻ってくる現象です。

発作性上室性頻拍はいくつかのパターンがありますが多いのは、房室回帰性(AVRT)と房室結節回帰性(AVNRT)です。

房室回帰性(AVRT)は多くはWPW症候群に伴って出現します。
正常の刺激伝導路以外に伝導路を持つ(副伝導路)ために、
正常の刺激伝導路→心房→房室結節→心室→副伝導路→正常の刺激伝導路→心房→…
と、リエントリーにより興奮が絶え間なく伝わることになり頻拍となります。

房室結節回帰性(AVNRT)は、房室結節内に不応期に違いのある2つの伝導路が存在することによりリエントリーの機序で 上室性頻拍が生じます。

▼発作性上室性頻拍の心電図

心拍数は140〜240程度です。AVRTでは心室の興奮が心房の興奮よりも先行するのでU・V・aVf誘導で陰性のP波が 生じます。
AVNRTでは心房と心室の興奮はほぼ同時期となりP波はQRSに隠れてしまうことがあります。

▼発作性上室性頻拍の症状

頻脈により動悸が生じます。
レートが早すぎる場合には心拍出量はかえって低下するので血圧低下、めまい、 失神(Adam-Stokes発作)を呈することもあります。

▼発作性上室性頻拍の治療

迷走神経刺激(副交感神経刺激)で元に戻ることがあります。

薬物療法としては、AVRT、AVNRTでは、ATPの急速静注またはCa拮抗薬であるベラパミルが使用されます。
ただし、WPW症候群に伴う場合はベラパミル投与には注意が必要です。

再発する場合にはリエントリー回路を断ち切るカテーテルアブレーションが行われます。副伝導路を焼却する治療ですが、 特にWPW症候群やAVNRTに起因する場合に有効です。

<医師国家試験101D18>
29歳の女性。
突然の動悸を主訴に来院。
これまで心電図に異常を指摘されたことはない。
意識は清明。血圧118/70mmHg。
PSVT
治療薬として適切なのはどれか。

a アトロピン
b アドレナリン
c イソプロテレノール
d ベラパミル
e リドカイン

突然の動悸から頻脈性の不整脈が考えられます。心電図所見はQRSが規則的に並んでいてQRS幅も正常なことから 上室性頻拍が考えられます。
P波が指摘できませんが、QRSに波に埋もれてしまっていると考えれば、AVNRTによる 発作性上室性頻拍と診断できます。

したがって正解はdのベラパミルになります。