急性糸球体腎炎
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急性糸球体腎炎

▼急性糸球体腎炎の概念

糸球体疾患のWHO分類の急性腎炎症候群は、急性に発症する腎炎の総称ですが、 その多くがβ溶連菌による感染が原因となる急性糸球体腎炎です。

主に小児が咽喉や皮膚感染を起こして1〜3週間後に生じます。
ブドウ球菌や肺炎球菌など他の細菌、ウイルス、寄生虫感染から 起こることもあります。

V型アレルギーの機序で、補体と免疫グロブリンが糸球体に沈着し、濾過がうまく出来なくなります。
そのため、乏尿となり、水分が体内に貯留するために高血圧、 浮腫を来たします。
また、尿は血尿となり、蛋白尿も見られますが蛋白量は多くありません。

▼検査

尿検査では血尿が見られます。肉眼では明らかではなくても顕微鏡でみると全例で 明らかになります(顕微的血尿)。

腎機能は、GFRが低下しBUNとCreの上昇が生じます。

血液検査では、β溶連菌に対する抗体であるASO、ASKの上昇、血清補体価の低下(血清補体価が低下するのは 急性糸球体腎炎、膜性増殖性腎炎、ループス腎炎の3つが有名)が見られます。

▼治療

比較的予後が良好な疾患ですが、中には慢性化する場合もあります。

本症は、基本的には対症療法しかなく安静第一です。
高血圧や浮腫に対しては水分摂取のコントロールを行います。ループス利尿薬が用いられることがあります。
BUNやCreの上昇があるので低蛋白かつ異化を防止するための高カロリーな食事とします。

▼国家試験問題(第101回A35)

9歳の男児。
今朝からの眼瞼浮腫と血尿とを主訴に来院。
2週前に扁桃炎で治療を受けた。
体温36.5℃。脈拍96/分、整。血圧180/102mmHg。
心音と呼吸音とに異常を認めない。
腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
脛骨前面を指で圧迫すると圧痕が残る。
尿所見:蛋白2+、糖(-)、沈渣に赤血球多数/1視野、白血球4〜6/1視野、赤血球円柱3〜5/1視野。
血清生化学所見:総蛋白6.4g/dl。アルブミン3.8g/dl、尿素窒素44mg/dl、 クレアチニン2.3mg/dl、総コレステロール160mg/dl。

免疫学所見:ASO128単位(基準250以下)、CH50 12U/ml(基準25〜35)。

治療薬として適切なのはどれか。

a ヘパリン
b フロセミド
c ゲンタマイシン
d シクロスポリン
e 副腎皮質ステロイド薬

血圧180/102mmHgで眼瞼浮腫から体液貯留が考えられ、尿素窒素44mg/dl、クレアチニン2.3mg/dlも 腎機能異常を示唆します。
小児の血尿では、IgA腎症、溶連菌感染後急性糸球体腎炎などが鑑別に挙がります。
CH50 12U/mlと低補体血症があり、2週前の扁桃炎は先行感染と考えられ、溶連菌感染後急性糸球体腎炎と 診断されます。

治療は、体液貯留の是正としてbのフロセミドが考えられます。