侵入奇胎と絨毛癌
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侵入奇胎と絨毛癌

▼侵入奇胎

侵入奇胎は侵入という名の通り、奇胎組織が子宮筋層内に侵入した状態で、 多くは胞状奇胎後の6ヶ月以内に生じ、現在では一次管理の中で 発見されることになります。

胞状奇胎が侵入奇胎に発展する確率は部分胞状奇胎で3%、全胞状奇胎で10%程度です。

<症状>
・不正出血
骨盤動脈造影でpoolingが見られるように血行が豊富で出血を来たします。

<検査>
超音波、CT、MRI、骨盤動脈造影(PAG)などが行われます。
肺に転移することもあり胸部X線写真等も必要です。
絨毛癌との鑑別ですが画像所見上は容易ではないようですが、 一次管理中見つかったものの多くは侵入奇胎です。

▼絨毛癌

絨毛癌は絨毛細胞からなる悪性腫瘍です。
妊娠性と非妊娠性がありますが多くは前者であり以下前者について書きます。

妊娠性絨毛癌は全胞状奇胎、正常妊娠あるいは流産後に生じます。
奇胎後管理が普及し絨毛癌そのものが減少したため、現在では正常妊娠あるいは流産後に 生じるケースが多くなっております。

<症状>
・不正出血
骨盤動脈造影でhyperなように血流が豊富で出血を来たします。

・肺転移による症状
容易に肺へと血行性転移をし、喀血、咳、胸痛などを訴えることもあります。

<検査>
hCG値は著増します。
さらに画像検査を行いますが、侵入奇胎との鑑別は困難です。

▼侵入奇胎と絨毛癌の治療

侵入奇胎も絨毛癌も治療は基本的には同じで、外科治療か化学療法を行いますが、 絨毛癌の予後は不良です。

<妊孕性を温存しない場合>
病巣が子宮内に限局している場合、単純子宮全摘術を行います。
そして、病理学的検査を行い、侵入奇胎であれば絨毛癌予防のために単剤化学療法を追加します。

<妊孕性を温存する場合>
化学療法を行いますが、病理的な検査ができないために絨毛癌診断スコアによって臨床的侵入奇胎か臨床的絨毛癌 かを診断します。
前者であれば単剤投与、後者であれば多剤化学療法を行います。

<よく使われる抗癌剤>
・Methotrexate(MTX):葉酸合成阻害剤。比較的特異な副作用としては肝機能障害があります。
・Actinomycin-D:RNA合成を抑制。MTXによりも骨髄抑制の程度も重篤とされています。
・Etoposide:植物アルカロイド系の抗癌剤です。BEP療法など婦人科領域では比較的良く使われている薬剤です。