高プロラクチン(PRL)血症
▼高プロラクチン(PRL)血症の概念
プロラクチン(PRL)は乳汁分泌を促すホルモンです。
妊娠中にPRL分泌が亢進し授乳の準備をします。そしてプロラクチンの性腺抑制作用のために妊娠中、授乳中に
は月経が止まります(無月経)。
これは生理的な高プロラクチン血症といえると思います。
一方で、妊娠していないにも関わらずでプロラクチンの分泌が亢進してために月経が来ない場合は
病的な高プロラクチン血症といえます。
この病的な高プロラクチン血症の原因として、視床下部性、下垂体性、甲状腺機能低下症、薬剤性などがあります。
1.ドーパミンがプロラクチン分泌を抑制(視床下部性、薬剤性)
2.TRHがドーパミン分泌を亢進(甲状腺機能低下症)
の2点が重要です。
▼視床下部性高プロラクチン(PRL)血症
下垂体からのプロラクチン分泌は視床下部から分泌されるドーパミンにより抑制されるため、
視床下部のドーパミン分泌低下は高プロラクチン血症となります。
これが視床下部性の高プロラクチン血症で、Chiari-Frommel症候群とArgonz-del Castillo症候群があります。
前者は分娩後も持続する高プロラクチン血症で、後者は分娩に関係なく生じる高プロラクチン血症です。
治療としてはドーパミン作動薬(ブロモクリプチン、テルグリド)を使います。
▼下垂体性高プロラクチン(PRL)血症
下垂体腫瘍であるプロラクチノーマはプロラクチン分泌細胞が腫瘍化した病態で、
血中プロラクチンの値は非常に高くなります。
プロラクチンの異常高値でまず最初に考えられる疾患です。
診断は画像診断(MRI)になりますが、腫瘍サイズが小さい場合(ミクロアデノーマ)はdynamic MRIを撮影し、
造影効果をみることで診断します。
成長ホルモン(GH)産生腫瘍でもGHの他にプロラクチンが分泌されることがあります。
治療は、サイズが小さい場合(ミクロアデノーマ)にはドーパミン作動薬投与をします。
著効例では腫瘍細胞は縮小し根治することもあります。
薬物療法に抵抗性であったり、腫瘍サイズが大きい場合(マクロアデノーマ)の場合には
Hardy手術により腫瘍切除が行われます。
▼甲状腺機能低下症
TRHはプロラクチン分泌作用もあるため、甲状腺機能低下症でTRH分泌が亢進するとプロラクチンも上昇します。
したがって、治療には甲状腺ホルモン投与が必要です。
▼薬剤性高プロラクチン(PRL)血症
実際の臨床でも非常に目にするようです。
視床下部からのドーパミン分泌がプロラクチン産生を抑制するので、ドーパミン受容体遮断、ドーパミン合成抑制作用の
ある薬剤は高プロラクチン血症を来たすことがあります。
ドーパミン受容体遮断といって有名なのが抗精神病薬と消化管機能改善薬のスルピリドです。
ドーパミン受容体にはいくつか種類がありますが、これらの薬剤では高プロラクチン血症を来たすことが
あります。他に有名なのが抗うつ薬です。三環系抗うつ薬に多くみられますが、SSRIのルボックスでも
稀に生じるようです。