子宮頸癌
▼子宮頸癌のポイント
・近年、罹患率も死亡率も減少傾向(*子宮体癌は高齢化とともに増加)
・一方で若年発症例は増加
・発生にHPV(ヒトパピローマウィルス)が関与(特に16,18型)
・病理学的には扁平上皮癌が多い(90%)。
・好発部位は扁平円柱上皮境界(SCJ)
▼子宮頸癌の症状
初期には無症状ですが、ある程度進んでくると症状を呈します。
・不正出血、性交時の接触出血、血性帯下
・下腹部痛
大きくなった腫瘍によって子宮口が塞がると子宮腔内に分泌物が貯留し感染が加わると
膿となり(子宮瘤膿腫)、発熱と下腹部痛を呈します。
また、これを排泄しようと子宮が収縮し陣痛様の疼痛(Sympson徴候)となります(体癌でも見られる)。
▼子宮頸癌の検査
<細胞診(スクリーニング)>
子宮頚部を綿棒や専用のブラシでこすることで細胞を採取し顕微鏡で調べる検査です。
子宮頚癌の細胞診の検査結果は5段階(classT〜X)に分けられます。
I、Uは正常、
Vaは軽度ないし中等度の異形成(5%が癌)、Vbは高度異形成(50%程度が癌)、
Wは上皮内癌、
Vは浸潤癌、
を想定してします。
クラスV以上の場合には、コルポスコピーと狙い組織診が行われます。
<コルポスコピーと狙い組織診>
コルポスコピー(膣拡大鏡)で子宮頚部の粘膜の表面を観察します。
次いで酢酸加工を行います(加工コルポスコピー)。
コルポスコピーでは血管像が重要ですが、
酢酸加工により背景が白色化し血管像が見えやすくなります(モザイク状、赤色斑など)。そして
異常所見を呈した部分を狙って組織を採取します(狙い組織診)。
<円錐切除術>
組織診で上皮内癌であることが確定していれば治療として行われますが、
それ以外では検査目的で行われます。
<画像検査>
・CT
造影CTはリンパ節転移や遠隔転移の有無を調べるのに有用です。
・MRI
Tb期以上の病変の広がりがある場合に正常組織とにコントラストの差が出るために有用です。
<腫瘍マーカー>
扁平上皮癌ではSCC、腺癌ではCA125、CA19-9などが治療効果の判定や再発の発見に使われます。
▼子宮頸癌の治療
治療は基本的には臨床進行期分類により決まります。
・扁平上皮病変
病期 | 範囲 | 治療 |
0期 | 上皮内癌 | 円錐切除 |
T期 | 癌が頚部に限局 | |
Ta1期 | 深さ3mm以内、拡がりが7mmを超えない | 円錐切除 |
Ta2期 | 深さ3mmを超えるが5mm以内 | 準広汎子宮全摘術 |
Tb期 | 臨床的に明らかな病巣でTaを超える | 広汎子宮全摘術 |
U期 | 癌が頸部を越えて拡がるが骨盤壁または膣壁下1/3には達しない | |
Ua期 | 子宮傍組織浸潤は認められない | 広汎子宮全摘術 |
Ub期 | 子宮傍組織浸潤を認める | 広汎子宮全摘術 (+放射線、化学療法を考慮) |
V期 | 骨盤壁に達するか膣壁下1/3に達する | 放射線照射(+化学療法) |
W期 | 小骨盤を超えて広がるか、膀胱、直腸の粘膜を侵す | 放射線照射(+化学療法) |
0期、Ta1期であればリンパ節転移もないので円錐切除後、経過観察とします。
Ta2期だと数%でリンパ節転移があるので生命予後を考えると準広汎子宮全摘術が望ましいと 考えられます。
Tb期、U期は広汎子宮全摘術が行われますが、Ubでは予後が良くないために放射線や化学療法の 追加が考慮されます。
V期、W期では根治的な手術ができないために放射線照射が第一選択となります。
・腺病変
病期 | 治療 |
0期 | 単純子宮全摘術 |
Ta期 | 単純〜広汎子宮全摘術 |
Tb期 | 広汎子宮全摘術 |
Ua期 | 広汎子宮全摘術 |
Ub期 | 広汎子宮全摘術 (+放射線、化学療法を考慮) |
V期 | 放射線照射+化学療法 |
W期 | 放射線照射+化学療法 |
腺癌は扁平上皮癌よりも予後が不良です。
0期(上皮内癌)でもSCJから離れた部位に別の病変が存在(skip lesion)している可能性があるために 原則として単純子宮全摘術を行います。
Ta期の切除範囲に関しては統一的な見解はないようです。
Tb期〜Ub期では広汎子宮全摘術が行われます。
V期、W期では放射線照射と化学療法中心となりますが、その成績は厳しい状況です。
<手術>
・広汎子宮全摘術
子宮、傍結合組織(子宮を固定している靭帯)、膣上部を摘出します。
リンパ節郭清も行いますが、子宮癌では所属リンパ節ではない 傍大動脈リンパ節の郭清に関しては議論があります。
合併症として特に問題になるのが骨盤神経叢を傷つけるために生じる膀胱機能障害(尿失禁)、 リンパ節郭清でリンパ流が滞るために生じるリンパ浮腫あります。
・準広汎子宮全摘術
広汎子宮全摘術の際に生じる膀胱機能障害を避けるために行われるようになった縮小手術ですが、その分、 傍結合組織の摘出が不十分となります。
<放射線照射>
・外部照射
・内部照射
<化学療法>
シスプラチンベースでの化学療法を加えることで放射線単独よりも生存期間が延長した 報告があります(Journal of Clinical Oncology,2007)。
シスプラチンはプラチナ製剤でDNA複製阻害効果により抗腫瘍効果を発揮します。 副作用としては腎障害が有名です。腎機能低下患者では同じプラチナ製剤では カルボプラチンが使われますがカルボプラチンはシスプラチンよりも骨髄抑制が強く生じます。