原発性胆汁性肝硬変
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原発性胆汁性肝硬変(PBC:primary biliary cirrhosis)

▼PBCの概念

原発性胆汁性肝硬変(PBC)は、 肝内胆管が炎症性に破壊され、肝内の胆汁のうっ滞を来たし、最終的に 肝硬変へと移行する疾患です。
肝外の胆管の閉塞はきたしません。
名称が似ていて同じ自己免疫学的機序で発症するものとして原発性硬化性胆管炎がありますが、 こちらは肝外の胆管も炎症が生じます。

肝内胆管に炎症が生じる原因は不明ですが、 抗ミトコンドリア抗体が高値陽性であること、自己免疫疾患の合併(シェーグレン症候群など)が多いことなどから、 自己免疫の関与が考えられています。

鑑別診断としては、胆汁うっ滞性の薬剤性肝障害などがあがります。

▼PBCの症状

症状を呈さないこともあり、その場合、無症候性PBCと分類されます。
血液検査により胆道系酵素の上昇(特にALP)などから診断されたケースで、無症候のまま数年以上を経過することもあります。

何らかの症状を呈する場合は、症候性PBCと分類されます。
初発症状としては、皮膚掻痒感が多いです。
胆汁うっ滞により皮膚掻痒感が生じるようですが、その詳細は明らかではないようです。体質性黄疸で 高ビリルビン血症があっても皮膚掻痒感は生じないので ビリルビン以外の何らかの物質が原因と考えられています。
その他の症状として、胆汁うっ滞により胆汁酸の原料であるコレステロールが 余るために高コレステロール血症を来たし、皮膚に黄色腫を来たすこともあります。
腸管への胆汁分泌が低下するため脂肪の吸収が低下します。
脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,K)が欠乏し、その症状を呈します。

肝臓以外の合併症として、シェーグレン症候群が多く、他に関節リウマチ、橋本病などがあります。

▼PBCの検査

<血液検査>
胆汁うっ滞を来たすために胆道系酵素(γ-GTP、LAP、ALP)が上昇します。
特にALPの上昇が顕著ですが炎症による胆道系の細胞の障害によると考えられます(LAPは胆汁中に含まれる酵素)。
血清ビリルビンは病気が進行するとともに上昇します。
また、トランス(AST、ALT)の上昇がみられ、肝機能低下に反してコレステロールの上昇がみられます。

本症ではD−ペニシラミンが治療で使われることがありますが、銅代謝に異常が生じるためです。
銅は胆汁とともに排泄されるので、これが阻害され血清銅、セルロプラスミン、尿中銅は上昇します。

抗ミトコンドリア抗体が陽性となります。抗核抗体陽性や他の自己抗体が出現することもあります。
抗ミトコンドリア抗体にはM1〜M9があり本症ではM2抗体が必ず陽性となります。 したがって、精密検査によりM2抗体を調べれば確実です。

<肝生検>
病理組識学的には慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)の像がみられます。

▼PBCの治療

ウルソデオキシコール酸が有効です。
高TG血症の治療薬であるベザフィブラートも有効が確認されています。
かゆみの軽減に脂質異常症治療薬のコレスチラミンが使われることがあります。 停滞している胆汁の成分を吸着する働きがあるとされます。

高度の黄疸が持続する場合には、血漿交換やビリルビン吸着療法で一時的に黄疸を軽快させることが できますが、内科的治療に難渋する場合、肝移植を考慮します。