慢性肝炎
TOP>肝・胆・膵>慢性肝炎

慢性肝炎(chronic  hepatitis)

▼慢性肝炎の概念

慢性肝炎は新犬山分類では、“臨床的には6ヶ月以上の肝機能検査値の異常とウイルス感染が持続している病態をいう”、 とあります。したがて、ウィルス性の肝炎が前提となり、 HBVによるB型慢性肝炎とHCVによるC型慢性肝炎が含まれます。
前者が30%、後者が70%です。

HBVは成人以降の初感染では滅多に慢性化しないので、多くはキャリアからの発生です。
HCVは初感染時期に関わらず高率に慢性化します(急性期の症状は軽度)。
HCVにはサブタイプがありますが、日本はインターフェロンが利きにくい 1b型が多いです。

慢性肝炎は、肝硬変、肝細胞癌へと進展します

C型では免疫機能に障害が生じるようで、 甲状腺機能障害(低下or亢進)、シェーグレン症候群などを合併することがあります。

▼慢性肝炎の症状

肝臓は“沈黙の臓器”といわれるように、症状を呈するのは、肝炎が進んだ状態になってからです。 線維化が進み肝硬変に近づくにつれて、肝機能が低下して、倦怠感、食欲不振などの不定愁訴を訴えます。

肝機能が低下するとエストロゲン代謝が滞るため、クモ状血管腫、女性化乳房などが見られることがあります。

▼慢性肝炎の検査

<血液検査>
HBV、HCV感染の有無を調べるために、肝炎ウイルス抗体を調べます。 そして、ウイルス遺伝子の定性検査を行い、感染が持続しているかどうかを確認します。
B型慢性肝炎では多くはHBe抗原が陽性のままでseroconversionが起こらなかったタイプですが、中には、 がHBe抗体陽性となるものの肝炎が続くタイプもあります。
C型慢性肝炎はHCV抗体は陽性ですが、HCV-RNAも検出される状態となります。

感染が明らかでトランスアミナーゼ(AST、ALT)の上昇などが見られれば、慢性肝炎と診断され、 治療が考慮されます。

肝臓機能が低下すると血小板の分化に必要なトロンボポエチン(TPO)が作られなくなるため、 また、門脈圧が高くなるため血小板数が低下します。 血小板数を肝炎活動の参考にすることもあります。

<腹腔鏡検査>
B型慢性肝炎では炎症を反映して赤色紋理、赤色斑紋を認めます。
C型慢性肝炎では肝臓表面は白色調が強く、白色紋理、斑紋が見られます。

<肝生検(針生検)>
組織学的には、門脈域にリンパ球を主体とした細胞浸潤と線維化が見られ、 肝実質内には種々の程度の肝細胞の変性・壊死所見が見られます。そして、 線維化(staging)と活動性(grading)の各段階に分けて表記します。
・staging
線維化の程度は、線維化なし(F0)、門脈域の線維性拡大(F1)、bridging fibrosis(F2)、 小葉のひずみを伴うbridging fibrosis(F3)の4段階に区分します。
さらに結節形成傾向が全体に認められる場合は肝硬変(F4)と分類します。

・grading
その程度により、活動性なし(A0)、軽度活動性(A1)、中等度活動性(A2)、 高度活動性(A3)の4段階に区分します。

▼慢性肝炎の治療

B型慢性肝炎では、HBVをたたくために、インターフェロンや核酸アナログ(最近では N.Engl.J.Med2006;354などでエンテカビルがラミブジンより 有効という報告がある)が使われます。

C型慢性肝炎では、HCVをたたくために、インターフェロン(orペグインターフェロン)とリバビリンの併用療法等が 行われます。
インターフェロンには重篤な副作用(うつ症状、間質性肺炎など)が知られています。
また、リバビリンの副作用には溶血性貧血などがあります。
その他の治療としては、肝臓の炎症を抑える目的でグリチルリチン、胆汁酸製剤などが用いられます。