合併症妊娠(SLE、ITP)
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自己免疫疾患(SLE、ITP)の合併症妊娠

▼SLEの合併症妊娠

<妊娠がSLEに与える影響>
SLEは自己免疫学的な機序により生じますが、一般に、妊娠初期ではSLEは増悪する傾向にあります。 SLEはTh2型の疾患で、妊娠によりTh1/Th2バランスがTh2に傾くことがひとつの機序とされます。
SLEとは診断されていなかった人が妊娠によりSLEを発症する例もあるようです。

妊娠中期から分娩にかけてはSLEは軽快するとされています。エストロゲン、プロゲステロンなどのホルモン増加 がSLEの病態に作用している可能性が考えられます。
しかし、SLEの病態そのものが寛解と増悪を繰り返す性質を有することから、妊娠がSLEの病態に どのような影響を与えるかは見解がわかれるようです。

ただ、産褥期に症状が悪化する傾向が強いとのは確実なようです。

SLE合併妊娠では、自然流産、早産の頻度が高くなります。胎児の状態が悪く急速遂娩の必要が生じる ケースが多いためです。

<新生児への影響>
新生児ループスとよばれるSLE様症状(ループス皮疹、血球減少など)を呈することがあります (NLE:neonatal lupus erythematosis)。 母体からの自己抗体が胎盤経由で新生児へと移行して生じると考えられ、移行抗体が消失する数ヶ月後には 改善します。
また頻度は低いですが完全房室ブロックを発症することがあります。これは不可逆的で ペースメーカーが必要となります。
NLE発症例にはSS-A、SS-B抗体陽性例が多いようです。

<妊娠管理>
抗リン脂質抗体が陰性であればステロイド(プレドニゾロンは胎盤通過性がなく好んで使われます) によりSLEの治療を行います。
陽性の場合は、ステロイドにアスピリンあるいはヘパリン(ワーファリンは胎盤移行性があり禁忌)を加え、 血漿交換療法を行うこともあるようです。
SLEの活動指標しては血清補体価(CH50)を使うようです。

<分娩後>
分娩後はSLEが悪化することが知られており、ステロイドの増量が必要になるケースが多いですが、 プレドニゾロンであれば母乳移行性はないので、母乳中止の必要はありません。

▼ITPの合併症妊娠

ITPは抗血小板抗体が原因で生じ、 ITP合併妊娠では,妊娠中および分娩時の出血リスクが増大します。
また、抗血小板抗体はIgG抗体で胎盤移行性があるために、 胎児においても血小板低下が見られ、場合によっては頭蓋内出血などが生じます。

ITPに対する治療として、プレドニゾロン、場合によっては免疫グロブリン大量療法を行います。

分娩は、胎児の頭蓋内出血を予防するために帝王切開が行われていましたが、実際には血小板低下が 見られる児は多くないことなどから、基本的に経膣分娩とすることも多いようです。