甲状腺疾患の合併症妊娠
▼Basedow病の合併症妊娠
Basedow病はTSH受容体抗体(TRAb)が産生され、TSH受容体と結合するために生じますが、
TRAbはIgG分画なので胎盤移行性があり胎児に移行します。
したがって、胎児にも甲状腺機能亢進症が生じると考えられます。
Basedow病は自己免疫的な機序で発症しますが、妊娠が進むと免疫学的な変化が生じてBasedow病自体は
軽くなることが多いようです。ただし、出産直後は一時悪化する傾向があるようです。
合併症ですが、母体の甲状腺機能がコントロールできていない場合には、妊婦に妊娠高血圧症候群、流・早産などが生じ
ます。
胎児は甲状腺機能亢進状態となるためにIUGRとなります。
妊娠中の管理ですが、非妊娠時と同じく抗甲状腺薬を継続します。
抗甲状腺薬は胎盤通過性があり(メチマゾール、プロピオチオウラシルともに)、胎児へと移行すると考えられますが、
胎児も甲状腺機能亢進症を呈していると考えられるのでむしろ好都合です。
そして、胎児にとっての抗甲状腺薬の適量が母体のT4値が正常上限のときにちょうどよいとする
データがあり、その値を目標に投与を行います。
分娩後は、胎児は母体からのTRAbが残存するのに対し、抗甲状腺薬が速やかに消失するために、一過性の
甲状腺機能亢進症を呈することがあります。新生児血中TRAbは母体の値と良く相関するため、
母体のTRAbから新生児が機能亢進をきたす可能性を予測できます。
TRAbは生後2カ月頃には正常となります。
授乳を行うときには、メチマゾールは母乳移行性が高いのでプロピオチオウラシルが好まれます。
▼甲状腺機能低下症の合併症妊娠
胎児は母体からのT4を利用しているため、母体中のT4が少ないとIUGRとなることあります。
したがって、非妊時と同じくT4の補充を行います。