大腸への血液の循環が悪くなるために、大腸粘膜が虚血となり炎症や潰瘍を生じる疾患です。
もともと血管に動脈硬化があるところに便秘などが誘因となって発症するといわれており、
高齢者に多いです。
左半結腸に好発します。左半結腸を還流しているのは下腸間膜動脈で動脈の吻合が
少ないためのようです。
突然の激しい腹痛で発症します。
この腹痛は虚血のためで、心筋虚血で胸痛が起こるのと同様です。
また、粘膜下出血を起こし、新鮮血の下血がみられます。
虚血部の血管透過性が亢進するために腸管へ水分が流出し下痢も伴います。
悪心、嘔吐、発熱が認められることもあります。
虚血性腸炎は、重症度から一過性型、狭窄形成型、壊死型の3つに分けられます。
下腸間膜動脈支配の左半結腸ではやや未発達ですが、腸管の血流は側副路があるので、
多くの場合は一過性型でその後軽快します。
しかし、中には狭窄を形成する狭窄形成型、腸管が壊死を起こす壊死型となることもあります。
心血管系の全身合併症や便秘習慣を有する高齢者、最近では人工透析患者は
重症化する危険性が高いとされます。
<注腸造影>
粘膜の浮腫で粘膜が盛り上がり出血を起こすので、鋸歯状陰影
や母指圧痕像といわれる像を呈します。また、
縦走潰瘍(クローン病に見られるが本症でも見られる)も見られます。
<内視鏡>
大腸内視鏡検査では、S状結腸や下行結腸に発赤、出血、浮腫、
縦走潰瘍(クローン病に見られるが本症でも見られる)などがみられます。
(98回医師国家試験A27)
壊死型の診断は必ずしも容易ではありません。
腹膜刺激症状やSIRSやショックを認める場合には壊死の確率が高くなり、
造影CTで腸管壊死が疑われる場合や内視鏡検査で粘膜壊死が見られる場合に総合的に判断し診断をつけます。
基本的には保存的に対処します。
安静、絶食、輸液を行います。腹痛に対しては鎮痙薬や鎮痛薬を投与します。
壊死が疑われる場合は外科的に切除を行います。
狭窄が高度で通過障害を来たす場合なども外科的治療が必要になります。