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「うつは心の風邪」というキャッチフレーズがありましたが、うつ病の有病率は人口の3~5%といわれており、
非常によくある疾患といえます。
しかし、うつ病の症状のひとつである抑うつ気分、つまり気分の落ち込みや気力、食欲の低下などは、
うつ病にのみ見られるのではなく、他の器質的疾患や統合失調症、神経症などの精神疾患でも見られ、
その診断は必ずしも
容易ではありません。
うつ病には、躁病とうつ病を繰り返す双極型(バイポーラー)と、うつ症状のみを呈する単極型がありますが、
単極型が多いとされています。
双極型の病前性格としては循環気質(明朗、社交的、寂しがりやなど)、
単極性では執着性格(几帳面、強い責任感、融通がきかないなど)、
メランコリー親和型(几帳面、良心的、争いを好まないなど)が多いとされています。
うつ病の原因は、明らかではありませんが、元々脳内のアミン代謝系などに何らかの欠陥があり、
それに何らかの外因(誘引)によりうつ病を発症すると考えられています。
したがって、うつ病になる内因(素因)があるという意味で内因性の疾患として捉えられており、
心理的な要因のみで発症するわけではなく薬が有効なケースもあると考えられます。
抑うつ気分、つまり気分の落ち込みや気力の低下、食欲の低下などが見られます。
不安感や焦燥感、体が重い、と訴えたりします。
思考障害としては、自分が罪を犯したという罪業妄想、自分が貧しいという貧困妄想、自分が重病であるという
心気妄想が見られることがあります。
このような念慮が強まって自分が生きていると周囲に迷惑がかかるといって自殺を図ったりします。
うつ病に比較的特徴的なのは、抑うつ気分の日内変動で、
朝方が特に悪く、夕方にかけて軽快します。
また、うつ病が身体症状を呈することは多く、特に睡眠障害はほぼ必発です。
典型的には早朝覚醒となりますが、長時間睡眠となるような場合もあります。ただ長時間寝ていても
熟眠感はないと訴えます。
身体症状として、倦怠感、食欲不振、便秘や下痢、体重減少、心悸動悸、異常感覚、めまいなどを
生じます。
これらの身体症状があるために、内科に行くことが多いです。血液検査などの検査を行ってみたものの、
異常が明らかではなく、異常なしと診断されることが多いようです。
患者の訴えや病前性格などを総合的に判断して診断をしていきますが、神経症性うつ病とは
鑑別が難しい場合があります。
症状の日内変動や自責感などが明らかであればうつ病の疑いが強くなります。
高齢者の場合は、パーキンソン病やアルツハイマー病などの器質脳疾患に伴う躁うつ状態との鑑別も
必要になります。
薬剤性のうつ状態としては、インターフェロン、ステロイドなどが有名です。
うつ病の背景には、ストレスや性格などが絡んでいるケースがほとんどですが、症状がつらい場合はまず、薬物
(特に抗うつ薬)により症状の軽快を目指します。
抗うつ薬は、最近では副作用が少ないSSRIが第一選択となっています。
SSRIは効果の発現まで2週間程度かかるとされており、睡眠障害などに対する効果を期待して
比較的即効性の抗不安薬が併用されることがあります。
2007年までで日本で使えるSSRIはパロキセチン(商品名:パキシル)、セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)、
フルボキサミン(商品名:デプロメール、ルボックス)の3つがありますが、
フルボキサミンあるいはが第一選択で使われるようです。パロキセチンは効果がシャープでよく使われていましたが
漸減がしにくいといった評価もあるようです。
セルトラリンは新しい薬ですが、
有効性と受容性はセルトラリンが最もよいという報告があります(Lancet誌2009年2月28日号)。
SSRIは副作用が少ないとされますが、比較的多い副作用に嘔吐があり、投与初期には説明が必要です。
一般に、抗うつ薬による効果がみられる症例は50~75%といわれています(プラセボも30%程度の効果があるとされる)。
抗うつ薬で軽快しない場合や、副作用などで十分な薬物治療ができない場合には、他の抗うつ薬への変更や
電気痙攣療法(m-ECT)も行われます。
特に高齢者のうつ病では、薬が使いにくいケースも多く、また、電気痙攣療法の有効性も高いとされており、
電気痙攣療法が考慮されます。
単極性のうつ病でも炭酸リチウムは抗うつ薬の増強効果があるとされ、使われることがあります。
<再発予防>
抗うつ薬等で状態が軽快した後、必要なのが再発予防です。
症状軽快後の薬物療法に関しては予防効果のエビデンスもありますが、いつまで続けるかについては議論があります。
そして、認知行動療法的なアプローチが再発予防に有効と考えられています。