早産,絨毛膜羊膜炎,前期破水

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▼早産と絨毛膜羊膜炎

早産は妊娠22週以降37週未満の分娩です。
早産率は5%程度で近年増加していますが、それは生殖補助医療の普及で多胎が増えたためです。
早産の最大の原因は絨毛膜羊膜炎(CAM)です。

絨毛膜羊膜炎の原因菌は大腸菌、B群溶連菌、クラミジアなど様々ですが、多くは膣からの上行感染です。
絨毛膜羊膜炎により生じたサイトカインが子宮収縮を起こし 切迫早産(早産になりかけている状態)となります。
胎児の状態等を把握しながら子宮収縮抑制剤等を使って妊娠の継続を図りますが子宮収縮を抑制できずに 自然早産となったり、 胎児が危険な状態であれば人工早産とすることもあります。

また、絨毛膜羊膜炎は胎児にも影響し、新生児感染症、Wilson-Mikity症候群(慢性肺疾患)、 脳室周囲白質軟化症(脳性麻痺になる)等になることがあります。

▼前期破水

正常分娩であれば破水は子宮口全開大時におこります(適時破水)。全開大よりも前に破水した場合は 早期破水といいます。
前期破水は分娩開始前に生じた破水です(分娩の開始は10分間隔の子宮収縮が生じたとき)。
いわば異常破水ですが原因の多くは絨毛膜羊膜炎です。炎症により卵膜が破れて破水することは 想像できます。
したがって、前期破水は切迫早産時に生じることが多いです。
そして、子宮収縮抑制等により早産を防げたとしても、前期破水が生じると羊水過小となるために 胎児の運動や嚥下活動ができなくなり、関節拘縮、肺低形成となることがあります。

▼切迫早産の検査

<エコー>
切迫では内子宮口の開大、頸管長の短縮といった所見が見られますが、 特に頸管長が重要で25mm以下では早産に至る可能性が高いため入院管理とします。

<絨毛膜羊膜炎>
絨毛膜羊膜炎の早期診断として頸管粘液中の顆粒球エラスターゼ、IL-6が 不顕性の絨毛膜羊膜炎の診断のマーカーとして使われるようです。
発熱や頻脈、子宮の張りや圧痛などの症状が出る前にこれらの検査が陽性であれば、今後、 絨毛膜羊膜炎となる可能性が高いため、予防的に膣洗浄等を行います。

<前期破水>
膣内容中のαフェトプロテイン(AFP)、インスイリン様成長因子結合蛋白、癌胎児性フィブロネクチンなど から前期破水の診断を行います。

▼切迫早産の治療

切迫早産では、妊娠継続をはかるか急速遂娩とするかの判断が重要です。
したがって胎児心拍数図で胎児の状態を知ることが必要です。状態が良ければ妊娠継続も考えますが、 母体の発熱や頻脈など絨毛膜羊膜炎が明らかで数日以内に早産となると考えられる場合は、数日の分娩 延長のメリットが乏しいと判断され急速遂娩となるようです。

<妊娠継続の場合>
塩酸リトドリン
β2アゴニストで子宮筋弛緩作用があるので子宮収縮抑制剤として第一選択薬として使われます。
しかし、β1作用もあるので 頻脈、不整脈等を生じることがあります。また、 血糖値を上昇させることがあり、妊娠糖尿病症例では特に 使いにくいです。

・硫酸マグネシウム
神経筋接合部のAch放出阻害、細胞内のカルシウム濃度の減少により筋弛緩作用を発揮します。 マグネシウム中毒の危険があるので濃度のモニターが必要です。

・ウリナスタチン
炎症性サイトカインの働きを抑えるために絨毛膜羊膜炎の進行を阻害し、 早産予防に役立つと考えられています。

・抗生剤



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