受精卵が子宮体部以外の場所に着床して発育することを子宮外妊娠といいます。
全妊娠に対して占める割合はおよそ1%ですが、クラミジア感染の増加で増加傾向にあります。
卵管妊娠(卵管膨大部、卵管峡部、卵管間質部)、卵巣妊娠、腹腔妊娠、頸管妊娠があります。
最も頻度が高いのが卵管妊娠で97%を占めます。
原因の多くは卵管の慢性炎症(多くはクラミジア感染)です。
受精は卵管膨大部で起こり卵管上皮の線毛運動によって宮体部へと輸送されますが、
炎症による卵管癒着(精子が通過できても受精卵が通過できない)、線毛障害などで卵管に着床してし
まいます。
<症状>
・卵管流産
受精卵が卵管腔に向かって発育した場合、やがて卵管壁から剥離し胎芽は腹腔内へ放り出されます。
剥離の際には急激な下腹部痛を生じ、また出血のためにしばしばショック症状となりますが、多くは自然止血します。
血液はダグラス窩に貯留します。
・卵管破裂
受精卵が卵管壁に向かって発育した場合、卵管穿孔が起こり大量出血となりショック状態となります。
自然止血も期待できないために緊急手術となります。
<診断>
・hCG
hCGは通常の妊娠と同様に上昇するので、これだけでは子宮外かどうかは鑑別できません。内診や
超音波検査と合わせて評価をします。
・内診
子宮体部に着床しないために妊娠週数に比較して子宮は小さく触れます。また、付属器の圧痛を生じます。
・超音波
正常妊娠では胎嚢は妊娠5週で100%検出されます。妊娠5週以降と考えられるのに子宮内に胎嚢が認められなければ
強く疑うことになります(hCGの結果と合わせて妊娠週数を評価する)。
付属器領域にリング状エコー、ドップラーで胎児心拍を認めれば確実です。
ダグラス窩に貯留した血液像(びまん性の点状エコーscatter)等も間接所見として有用です。
<治療>
妊孕性を温存する場合、破裂前ならば卵管線状切開術を行いが、胎児成分が遺残する可能性があり(子宮外
妊娠存続症)、経過観察が必要です。最近では腹空鏡下(ラパロ)で行います。
卵管破裂に対しては卵管切除術を行います。腹空鏡下で行うことも多いです。
妊孕性の温存を希望しない場合、破裂例であれ未破裂であれ卵管切除術とします。
胎児成分遺残のリスクはないので確実です。
<卵巣妊娠>
受精卵が卵巣表面に着床した状態です。症状は卵管妊娠と同じく突然の下腹部痛と大量出血によるショック症状です。
治療としては、卵巣摘出あるいは部分切除を行います。
<腹腔妊娠>
腹膜に着床した状態ですが、腹腔にはスペースがあるために胎児はそれなりに発育し、
そのまま生児を得たケースも報告されています。
しかし、多くは胎児死亡となり、死児はミイラ化します。
治療は胎児と付属物の除去ですが、腹膜を巻き込んでいるために大出血のリスクがあり、注意が必要です。
<頸管妊娠>
子宮頸管に妊娠した状態です。子宮腔内の異常(筋腫、腺筋症、人工妊娠中絶(子宮内操作)など)がある場合に
生じます。
大出血のリスクがあります。
治療は子宮摘出が行われてきましたが、無症状あるいは少量出血の時点で診断された場合、MTX(メトトレキサート)
による薬剤療法で子宮温存出来る場合もあるようです。