肝硬変は肝臓の表面がでこぼこと変貌し硬くなり、結節を形成した状態ですが、
硬いのは肝臓が肝炎などの肝障害のために組織の線維化が生じたためです。
肝硬変の原因としては、ウィルス性肝炎(B型、C型、非B非C)が最も多く、次いで、アルコール性肝炎、その他の
原因として、自己免疫性、代謝異常(ウィルソン病、ヘモクロマトーシス)などがあります。
初期の頃は、症状が少なく「代償期」と呼ばれます。
さらに進むと、さまざまな症状があらわれ「非代償期」と呼ばれます。
・全身倦怠感、食欲不振:詳しい機序は明らかでないと思いますが、代謝異常、サイトカイン等の影響により生じる
と思われます。
・黄疸:ビリルビン上昇のためです。3mg/dl以上で顕性黄疸となるとされます。
・腹水、浮腫:アルブミン低下による血漿浸透圧の低下、門脈圧亢進による静水圧上昇により生じます。
・クモ状血管腫、手掌紅斑、女性乳房化:肝臓でのエストロゲン代謝機能(グルクロン酸抱合)が低下するため
エストロゲン濃度が上昇して生じます。
・肝性脳症:アンモニアが一因とされますが、Fischer比(分岐鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸モル比)の増大など
アミノ酸のバランス異常も影響しているようです。便秘になると腸管内に排泄された尿素が
腸管細菌により脱アミノ化されアンモニアを生成するので肝性脳症は増悪します。
・門脈圧亢進症状:線維化により類洞が障害された結果、門脈圧は亢進し、汎血球減少、静脈瘤などを来たします。
肝硬変の末期に、急性腎不全を合併した場合、肝腎症候群といいます。
また、HBV、HCVの慢性肝炎がベースにあって肝硬変にまで至った場合、
膜性腎症(MN)や膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)などの糸球体病変を合併することもあります。
<血液検査>
AST、ALTが上昇します。一般的には肝硬変ではAST優位(>ALT)となります。
また、肝機能を反映する指標としてChild-Pugh分類がよく用いられます。
血清ビリルビン、アルブミン、腹水の有無、肝性脳症の有無、プロトロンビン時間(PT)が評価項目ですが、
プロトロンビン時間は凝固因子の半減期が短いために、リアルタイムに近い肝機能を
示しているとされ、特に重要です。
<ICG試験>
正常では10%未満ですが、肝硬変ではその値は上昇します。
<画像検査>
超音波検査とCTが有用です。エコーでは萎縮、辺縁の鈍化などの所見が得られます。また腹水の
確認も可能です。
ウィルス性肝炎がベースにある場合、肝細胞癌の発生リスクがあるため、
腹部超音波検査やCTで癌の有無を調べる必要があります。
<肝生検>
症状や血液検査などがはっきりしない代償性肝硬変の場合には、
肝生検で肝硬変まで進んでいるかどうか診断することもあるようです。
慢性肝炎が進むと中心静脈と門脈域が線維化と壊死によりつながっているようにみえます(bridging necrosis)。
さらに線維化が進むとそれらが仕切りとなり新たなスペースができます。これを偽小葉といいます。
肝臓に対する薬物療法としては、ウルソデスオキシコール酸、
小柴胡湯、グリチルリチンなどが用いられます。AST、ALTの低下が見込め、肝細胞癌の発生率を下げる効果
があります。
肝臓の負担を減らす目的で、禁酒など生活習慣の是正も重要です。
肝硬変による合併症としては、食道静脈瘤が重要です。出血は致死的になるため、内視鏡を用いた硬化療法等が
行われます。
肝性脳症に対しては、高アンモニア血症が誘因とされるため、
高蛋白食、便秘(アンモニアは腸内で発生する)、消化管出血を予防することが重要です。
劇症肝炎では使いませんが肝硬変では分岐鎖アミノ酸(BCAA)も投与されます。
腹水に対しては、塩分摂取で血管内の水分が増加すると腹腔内に漏れ出るため、塩分制限を行います。
さらに必要に応じて利尿薬やアルブミン製剤などを投与します。
最近では、自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法(ABMI療法)も行われています