アルコール性肝障害はアルコールの過剰摂取によって生じる肝障害で、、
アルコール性脂肪肝→アルコール性肝炎→アルコール性肝硬変と進行していきます。
アルコールは貯蔵できないので代謝される必要があります。
アルコールは酸化されアセトアルデヒド、さらに酸化されて酢酸になります
(アセトアルデヒドは肝臓や他の臓器に有害)。
この代謝はNAD+H+→NADHの反応を伴い、肝臓のNADH/NAD比は増加するため、
NADを必要とする他の代謝(炭水化物や脂質)が阻害されます。
その結果、β酸化が滞り、中性脂肪のTGが蓄積し、肝細胞は脂肪滴を蓄え脂肪肝となります。
逆にピルビン酸から乳酸の合成にはNADH→NAD+H+の反応を伴うので乳酸が蓄積し乳酸アシドーシスとなり、
アシドーシス化では尿酸の排泄が低下するので高尿酸血症となります。糖新生も滞り低血糖が起こります。
大雑把に、アルコール摂取により肝臓においては、
アルコール代謝が中心となって糖代謝や脂質代謝が犠牲となるので低血糖(糖新生抑制)や
脂肪蓄積(β酸化抑制)となる
といえると思います。
したがってまず生じるのがアルコール性脂肪肝です。肝臓は蓄積したTGを血中へ送り出すために
血中TGは上昇します(脂質異常症)。
アルコールによる肝障害が進むとアルコール性肝炎と呼ばれる状態になります。
病理学的には、マロリー(Malloly)小体や肝細胞の壊死像、好中球の浸潤が肝小葉中心性に生じます。
アルコール性肝炎の状態が長く続けば、最終的にはアルコール性肝硬変へと進展します。
アルコール性肝障害は男性に多いですが、同じアルコール積算飲酒量であれば女性の発症率は男性よりも
高いです。
<症状>
原則として無症状ですが、肝腫大を触れることがあります。
また乳酸アシドーシスとなり食欲不振、嘔吐、脱水などの症状となることがあります。
ピルビン酸はNADH→NAD+H+の反応により乳酸を合成するため、
アルコールによりNADH過剰となった状態では乳酸合成が亢進するためです。
<血液検査>
アルコール性肝障害では、一般的に、
AST優位のトランスアミナーゼの上昇が見られ、γ-GTPが上昇します。
コリンエステラーゼ(ChE)やTGは、脂肪肝の段階では増加します。
ChEは、肝臓の合成能を反映しているので、肝機能低下が見られる肝炎、肝硬変まで進むと低下します。
<画像検査>
腹部エコーでは、脂肪肝の段階では高輝度、肝腎コントラストの増強などの所見を呈します。
CTでは、脂肪肝では肝臓は低吸収に写ります。
<症状>
倦怠感、食欲不振、発熱等がみられることがあります。
全身倦怠感の原因として、複合的な低栄養状態とそれに起因した代謝障害が考えられているようです。
また、嘔吐、腹痛などの消化器症状やビリルビン上昇による黄疸などを呈します。
嘔吐や腹痛は肝腫大が影響していると考えられます。
<血液検査>
AST優位のトランスアミナーゼの上昇が見られ、γ-GTPが上昇します。
コリンエステラーゼ(ChE)やTGは、脂肪肝の段階では増加しますが、
肝炎まで至ると肝機能が低下するので低値となります。
また、アルコール性肝障害では、血清IgAの上昇が見られます。
アルコールの飲みすぎによる低栄養状態も影響して電解質が乱れることもあり、
低Na血症、低Ca血症、低K血症、低Mg血症を呈します。
<症状>
腹水など通常の肝硬変と同様の症状を呈します。
<血液検査>
アルコール性肝障害の特徴である、
AST優位のトランスアミナーゼの上昇、γ-GTP上昇、血清IgAの上昇が見れられます。
その他は、ウィルス性肝硬変と同様です。
肝臓を休める意味でも、安静、栄養管理が必要です。そして、断酒が必要です。
アルコール依存症にまで至っていることが多く、断酒は簡単ではありませんが、
断酒会などへの参加などが効果をあげています。