肺塞栓症

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肺塞栓症

▼肺塞栓症の概念

肺塞栓症は,肺動脈血管が何らかの塞栓子によって閉塞され,様々な症状を呈する疾患です。

全身の静脈から還ってきた血液は、肺動脈へと送り出されるため、 全身の癌が肺に転移しやすいのと同様に、肺でトラップされ、肺塞栓症となります。

▼肺塞栓症の原因

肺塞栓症の塞栓子としては,血栓,骨折により放出される脂肪組織や,羊水・空気などがありますが、 最も多いのは,下肢深部静脈にできた血栓です。

深部静脈血栓症が生じる原因は,血流のうっ滞、血管障害、血液凝固能の亢進 によります(Virchowの3徴)。

血流のうっ滞の原因としては,先天的には鎌状赤血球症,Kasabach-Merritt症候群などがあります。 Kasabach-Merritt症候群は,血管壁の構造異常を伴うために血流のうっ滞が生じるといわれています。
後天的には,種々の手術後の長期臥床,妊娠分娩,肥満,長時間の飛行機搭乗などがあります。

血管障害としては,外科的手術が多く,特に婦人科,泌尿器科における腹部骨盤の手術, 整形外科における臀部周辺,膝関節の手術でDVTが形成される確率が高いようです。

血液凝固能の亢進としては,欧米人では先天性血液凝固能の亢進による頻度が高いが, 本邦の頻度は低率です。先天性血液凝固能の亢進の重要なものは, アンチトロンビンV欠損症、プロテインC欠損症、プロテインS欠損症であり、 先天性血液凝固能の亢進の20〜30%を占めます。
後天的には注意すべきものとして悪性腫瘍があり、 肺塞栓症の20〜30%に何らかの悪性腫瘍が存在すると報告されています。

他に注目される疾患として,抗リン脂質抗体症候群などがあります。 抗リン脂質抗体としては,ループスアンチコアグラント,抗カルジオリピン抗体が知られている. その他,後天的な原因としては,経口避妊薬の常用,感染,ネフローゼ,多血症,肥満,糖尿病など、 枚挙にいとまがありません。

▼肺塞栓症の症状

症状は塞栓子が大きければ、急速に呼吸困難が生じ、最悪なケースとなる場合もありますが、 塞栓子が小さければ、ほとんど無症状の内に溶解されます。

塞栓が出来やすい要因を持っている場合に、慢性的に肺塞栓が続くことがあり、 肺高血圧となる場合、心臓に負荷がかかり、右心不全となることもあります。

▼肺塞栓症の治療

治療は、抗凝固療法による肺塞栓の予防が基本ですが、塞栓子が大きく、緊急性を要する場合には、 ウロキナーゼやtPAによる血栓溶解療法や外科的塞栓除去術が行われます。

抗凝固療法はワーファリンやヘパリンを用いますが、ワーファリンの効果は2週間程度かかるため, 初期はヘパリンを投与し、その後、ワーファリンによる抗凝固療法を行います。ワーファリンではPT-INRを参考にします。
抗凝固療法で血栓のコントロールが難しい場合に、肺塞栓の予防に下大静脈フィルターの留置が行われます。



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