成人T細胞白血病(ATL)は、HTLV-1というレトロウイルスに感染した後、20年以上(多くは40年以上)の経過後に、
発症する疾患で、HTLV-1に感染したT細胞が腫瘍化し増殖します。
HTLV-1感染がなぜATLを発症させるのかについては、まだ不明な点が多いです。
なお、レトロウイルスにはHTLV-1以外にエイズの原因ウィルスであるHIVがあります。
HTLV-1の感染経路は、垂直感染(母乳、胎盤、産道)、、性交、輸血、があります。
成人期以降に感染した人からは、ATLの発症はほとんどみられません。
したがって、HTLV-1キャリア(HTLV-1の症状はないが、ウイルスを持っている人)からの垂直感染を
予防することが最も重要です。
キャリアは九州南西部(鹿児島県、長崎県)などに多いです。
本症は、くすぶり型、慢性型、リンパ腫型、急性型の4型に分類されます。
くすぶり型、慢性型、リンパ腫型は経過中に急性型へと移行します。
高率に認められる症状としては、リンパ節腫脹、肝脾腫大、皮膚・粘膜浸潤などです。
腫瘍細胞がPTH関連蛋白質(PTHrP)という副甲状腺ホルモンに類似した蛋白を分泌するために、
高Ca血症を伴うことがあります。
末梢血標本で特徴的なのが、flower cell(花弁状の腫瘍細胞)です。
血液検査では、抗HTLV-1抗体が陽性となります。
また、悪性リンパ腫で認められることが多い、可溶性IL-2受容体の高値を呈します。
T細胞が腫瘍化し機能しないため、感染しやすくなります。したがって、適切な抗菌薬投与が
必要となります。
ATLに対しては、多剤併用化学療法が行われますが、再燃率が高く予後不良です。
NF-κBをターゲットにした治療薬に期待が持たれています。