・原発性の種類は、
表層上皮性・間質性腫瘍(卵巣腫瘍の60〜70%)、性索間質性腫瘍(6%)、胚細胞性腫瘍(30%)の3つ。
・全体としては80%は良性だが、高齢者では悪性比率が高い。
・嚢胞性腫瘍の多くは良性、充実性腫瘍の多くは悪性
・表層上皮性・間質性腫瘍では、排卵そのものがリスク因子
(排卵回数が少ない多産婦、経口避妊薬内服でリスク↓)
・胃癌の卵巣転移はKrukenberg腫瘍と呼ばれます(印鑑細胞癌に多い)。
・頻度として多いのは、漿液性腫瘍(良性、境界悪性、悪性)と粘液性腫瘍(良性、境界悪性、悪性)。
・良性の頻度が高いので、最も多いのは漿液性嚢胞腺腫。
・漿液性嚢胞腺腫は単房性(エコー検査で単純な球型の嚢胞)、
粘液性嚢胞腺腫は多房性。
・粘液性嚢胞腺腫の粘液はムコ多糖を含みアルシアンブルー染色に青く染まる(病理組織)。
性索間質性腫瘍はそれぞれ特徴的な臨床所見を呈します。
・顆粒膜細胞腫
境界悪性に分類されます。
エストロゲンを産生するために、若年者では女性化徴候、成人では月経不順、
閉経後の高齢者では乳房緊満感や再月経などを呈します。
・莢膜細胞腫
顆粒膜細胞腫は境界悪性ですが、こちらは良性腫瘍です。
同じくエストロゲンを産生するため同様の症状を呈します。
・Leydig細胞腫、Sertoli細胞腫
Leydig細胞腫(良性)もSertoli細胞腫(良性、境界悪性、悪性)も
アンドロゲンを産生するために男性化徴候を来たします。
好発年齢は20歳代です。
・(卵巣)線維腫
性索間質性腫瘍の中では最も多く見られます。
良性腫瘍ですが胸水および腹水を呈することがあります(Meigs症候群)。
胚細胞性腫瘍は若年者に多く発生します。
・成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)
嚢胞内に歯や骨、軟骨、髪の毛などが見られることがあり非常に特徴的です。
歯や骨はCT画像やエコーで高吸収、高輝度に写ります。また脂肪成分が多く、MRIの脂肪抑制
画像では低信号に写ることが多いです。
臨床的には、茎捻転を起こしやすく(良性で周囲と癒着せずに大きくなるため)、急性腹症を呈して
救急搬送されてくることもあるようです。
・腹部膨満感
卵巣腫瘍が大きくなった場合や腫瘍が腹水を産生する場合に生じます。
・茎捻転(特に成熟嚢胞性奇形腫)
・ホルモン症状(特に性索間質性腫瘍)
<画像検査>
MRI、CTにより病変の拡がりを評価します。
<簡略化した進行期分類>
T期 | 卵巣に限局 |
U期 | 骨盤内進展あり |
V期 | 骨盤外の腹膜播腫、後腹膜または鼠径部リンパ節転移(+)、 小腸または大網転移(+)、肝表面転移(+) |
W期 | 遠隔転移あり |
卵巣腫瘍では悪性が否定できない場合や、良性であっても症状を呈する場合には
原則として手術を行います。
良性腫瘍の場合、卵巣嚢腫核摘出術を行います。最近では腹腔鏡により行うケースが多いようです。
悪性が考えられるケースでは、腹腔内で腫瘍を潰すと腹腔内にばらまくリスクがあるため、開腹手術が行われます。
開腹の結果、悪性腫瘍であった場合、病期に関わらず、
両側付属器摘出+単純子宮全摘出術+大網切除術+リンパ節郭清術
を行います。
そして、卵巣癌では術後化学療法を行います(Taであれば必要ないとされる)。
胚細胞性腫瘍に対してはBEP(ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン)療法、
それ以外に対してはTP療法(パクリタキセル+シスプラチン)を行います。
・ブレオマイシン:アントラサイクリン系の抗癌剤ですが、副作用に肺線維症があります。
・エトポシド:アルカロイド系の抗癌剤です。
・シスプラチン:プラチナ製剤で副作用として腎毒性、聴神経障害が有名です。
・パクリタキセル:タキサン系抗癌剤で微小管に作用します。軸索輸送を阻害するため末梢神経障害などの副作用が
あります。