肝硬変などによる門脈圧亢進症があると、門脈に入りにくくなった血液は左胃静脈へと流れます。
左胃静脈は奇静脈、半奇静脈と吻合し静脈叢を形成しているので大量の血液が流れると静脈叢は
静脈瘤を形成します(食道静脈瘤)。
また、胃の噴門部粘膜下層にも静脈叢があるのでここに血液が
流れても静脈瘤を形成します(胃静脈瘤)。
静脈瘤が破裂すると吐血を来たします。静脈性の出血ですが大量の血液が
流れ出るので死に至ることもあります(肝硬変を合併している場合には止血機能も低下している)。
胃静脈瘤は食道静脈瘤より破裂の頻度は低いですが、出血の程度はひどくなります。
<食道造影>
静脈瘤は食道内へと突出するために静脈が蛇行している様子などが明らかになります。
<内視鏡検査>
静脈瘤が破裂しそうかどうかもある程度判断することができます。
基本色調は、白色静脈瘤と青色静脈瘤で、後者が破裂のリスクが高くなります。
また、cherry red spot、ミミズ腫れ様、血豆様のRC signが見られた場合には、
静脈瘤の破裂の前兆で注意が必要です。
食道静脈瘤の表記法は以下のようになっています(日本門脈圧亢進症食道静脈瘤学会1996)。
・location
・form
F0:静脈瘤として認められないもの
F1:直線的な細いもの
F2:連珠状、中等度
F3:結節状、腫瘤状
・color
Cw:白色静脈瘤(white)
Cb:青色静脈瘤(blue)
・RC(red color sign)
RWM:red wale marking(ミミズばれ)
CRS:cherry red spot
HCS:hematocystic spot(血豆様)
・発赤所見の程度
RC(-):発赤所見を全く認めない
RC(+):発赤所見を限局性に少数認める
RC(2+):+〜3+の中間
RC(3+):発赤所見を全周性に多数認める
出血の予防としてはEIS(内視鏡的硬化療法)とEVL(内視鏡的静脈瘤結紮術)が中心です。
EIS(内視鏡的硬化療法)が第一選択となっていますが静脈瘤の穿刺するので手技としては難しくなるようです。
内視鏡で静脈瘤を確認しながら静脈瘤に直接針を刺し、オレイン酸モノエタノールアミン(EO)を注入して
静脈瘤を固めていきます。
血管内注入が困難になったら、血管外にエトキシスクレロール(AS)を注射し、
食道粘膜を硬くすることで静脈瘤の再発を予防します。
RC sign陽性のF2、F3静脈瘤が適応となります。
EVL(内視鏡的静脈瘤結紮術)はゴムバンドを用いて食道静脈瘤を結紮することにより血栓性閉塞を
引き起こすものです。手技が簡単ですが、EISに比べて再発が高率に起こりやすいです。
したがって、手技が簡単というメリットから最近では静脈瘤破裂時の緊急止血に使用され、再発が多いことから
予防的治療では行われてなくなっています。
また、EIS(内視鏡的硬化療法)とEVL(内視鏡的静脈瘤結紮術)は併用されることがあります。
症例によっては、APC(アルゴンプラズマ凝固療法)などの地固め療法も併用されます。
EISやEVLを行っても再発する場合には、PTO(経皮経肝的静脈塞栓術)などが行われ、
胃静脈瘤にはB-RTO(バルーン下逆行性経静脈的塞栓術)も行われます。
外科的には、摘脾やHassab手術が行われます。
出血時の治療としてはEVL(内視鏡的静脈瘤結紮術)やS-B tube(Sengstaken-Blakemore double tube)
による圧迫止血が行われます。
薬物療法としてバソプレッシンを併用することがあります。バソプレッシンは抗利尿ホルモンとして有名ですが、
vaso(血管)をpressin(締め付ける)という名前の通り、細動脈収縮作用があるため内臓への血流を減らすことができ、
効果的です。