僧帽弁閉鎖不全症

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僧帽弁閉鎖不全症(MR:mitral regurgitation)

▼MRの概念

僧帽弁は左心房と左心室の間にある弁です。名前のとおり、僧帽弁の閉まりが 悪くなった状態が僧帽弁閉鎖不全症です。

原因には、様々なものがありますが、リウマチ熱、 僧帽弁逸脱症、腱索断裂、感染性心内膜炎が 多いようです。

僧帽弁逸脱症は、何らかの理由で、僧帽弁の一部が左房内へとはみ出してしまう疾患です。
僧帽弁の一部が正常の位置からずれてしまうため、閉鎖不全となります。

腱索は、僧帽弁を支えている組織で、これが断裂することで、閉鎖不全となることは想像に難くありません。

感染性心内膜炎では、炎症により弁尖や弁輪が破壊されるため閉鎖不全となります。

▼MRの病態

僧帽弁が閉まらなくなると、左心室から左心房へと血液は逆流します。

したがって、左心房と左心室ともに容量負荷がかかります。

数字で表現すれば、大動脈へ100の血液を送る必要がある場合、 左室は、100を駆出するのではなく、逆流する量(たとえば20とすると)を余計に駆出する必要があるので、 トータル120を駆出することになります。
左心房も同様に肺から来る100の血液と逆流してくる20の血液のトータル120を駆出することになります。

左房、左室ともに容量負荷のために拡大します。
拡大による代償機構が働くため、急激に生じた僧帽弁閉鎖不全以外では重篤な肺うっ血に至ることはまれなようです。

▼MRの症状

長期間、無症状で経過しますが、代償できなくなると左室から大動脈への血流が減少し(左心不全)、 労作時呼吸困難等が生じます。

▼MRの聴診所見

僧帽弁が閉じるのは、収縮期です。
したがって、収縮期に血液の逆流による雑音が聞こえます(全収縮期逆流性雑音)。
僧帽弁逸脱症では、収縮期に僧帽弁が逸脱したときの音(収縮期クリック)が聴こえて、その後に 逆流が生じるために収縮期雑音が聴こえるようになります。
また、拡張期に左室に容量負荷が生じているためV音が聴こえます。
また、逆流量が多くなると拡張期に左房から左室へと流れる血液量が多くなるために相対的な僧帽弁狭窄(MS) となり拡張期雑音が聴こえます(Carey Coombs雑音)。

▼MRの検査

<胸部X線写真>
左房が拡大すると左第3弓、左室が拡大すると左第4弓の突出が見られます。

<心電図(ECG)>
左房肥大によりV1誘導でP波が二相性になります。 また、左房拡大が顕著となると心房細動が見られることがあります。

<心エコー>
左房と左室の拡大が見られます。
また、カラードプラで左室から左房に逆流するジェットを確認できます。

<心カテーテル検査>
PAWPの上昇、左房圧の上昇が見られます。

▼MRの治療

手術療法としては、僧帽弁形成術と僧帽弁置換術があります。

僧帽弁形成術は、僧帽弁を再構成する方法で、僧帽弁逸脱症などでよく行われます。

僧帽弁置換術は、僧帽弁を人工弁に交換する手術で、人工弁は、豚などの生体弁の他、機械弁が使われます。
生体弁と機械弁のそれぞれに長所、短所があります。 機械弁では、生涯、抗凝固薬を飲み続ける必要があることから、高齢者では、生体弁が好まれ、 若年者であれば、耐久性に優れる機械弁が好まれるようです。



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