心不全

病気の疑問と考え方捉え方

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心不全

▼心不全の概念

心不全の定義には意見の対立があるようです。
しかし、単純化して、心臓が末梢が必要とするだけの血液を送り出せなくなること(需要に供給が追いつかない)、と考えてさほど問題はないように 思います。
一般的な心不全は、弁膜症、心筋梗塞などの心疾患により、心拍出量が低下することにより生じます。

▼高拍出性心不全

心不全は需要に供給が追いつかない状態なのでやたらと需要が高まった場合にも心不全となりえます。
たとえば、甲状腺機能亢進症で末梢のエネルギー必要量が増大している場合や 貧血があってヘモグロビン量が低下している場合、アナフィラキシーショック、動静脈シャントなどでは 心拍出量が多くても必要十分な血液量とならないため心不全になってしまいます(高拍出性心不全)。

▼右心不全と左心不全

心臓は、右心系(右心房、右心室)と左心系(左心房、左心室)に分かれます。
したがって、右心系が十分な量の血液を送り出せないという状態(右心不全)と、左心系が十分な量の 血液を送り出せないという状態(左心不全)が考えられます。

右心不全の場合は、血液を肺へと送ることができなくなるために、右心系の手前である大静脈に 血液が滞ることになります。
そのため、上大静脈に近い頸静脈が怒張したり、下大静脈に近い肝臓が腫大し、 中心静脈圧や右心房圧は上昇します。

左心不全の場合は、血液を大動脈へとと送ることができなくなるために、 肺動脈楔入圧(左心房圧を反映)が上昇します。
そして、左心系の手前の肺で血液が滞ることになり、肺の毛細血管の静水圧が 上昇するために肺胞内へと水分が漏出します(肺うっ血)。肺胞内が水浸しになるので 酸素交換ができなくなり呼吸困難になります。
また、末梢の組織が血液を必要としているのに血液が来ない状態になるので、 たとえば、筋肉では嫌気性代謝が進み乳酸が蓄積し、易疲労感を訴えます。
また、血液中の酸素は使い切らされてしまいチアノーゼを来たしますし、 中枢神経への血流量が低下すれば意識障害も来たします。

▼Forrester分類とKillip分類

心不全の重症度分類にはNYHAの分類、急性心筋梗塞ではForrester分類やKillip分類があります。
Forrester分類は検査的な分類であり(肺動脈楔入圧と心係数より分類される)、 Killip分類は臨床所見から分類されます。

Forrester分類
分類 肺動脈楔入圧 心係数 治療
T度 <18mmHg >2.2l/min/m2 必要なし
U度 >18mmHg >2.2l/min/m2 利尿薬、血管拡張薬
V度 <18mmHg <2.2l/min/m2 輸液、強心薬
W度 >18mmHg <2.2l/min/m2 利尿薬、血管拡張薬、強心薬

Killip分類(臨床所見による分類)
T度 ポンプ失調の徴候(-) 心不全なし
U度 背面 1/2で湿性ラ音聴取 軽症心不全(ラ音,V音,頚静脈怒張など)
V度 全肺野で湿性ラ音聴取 肺水腫
W度 心原性ショック 心原性ショック



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